NPO法人再生医療推進センター

再生医療相談室 回答ページ No.414


専門分野: その他

Q: 再生医学を学べる大学院を探しております

 はじめまして。卒業後の進路として、再生医学の学べる大学院を探しております。インターネットで色々探していますが、自分のしてみたい研究をしている所がなかなか探せず苦労しています。アドバイスを頂けたら幸いです。
私は、ES細胞やiPS細胞を使って器官形成に関する研究をしてみたいと思っています。京都大学をはじめ様々な大学で研究されていると思いますが、恥ずかしながらまだ勉強不足の身で、漠然と【器官形成に関する研究】としか定まっておらりません。とくに【ES細胞やiPS細胞から人体のすべての器官を作りたい】と思っています(現状では無理のようですが)。特定の器官を対象とした研究をしている所はあるようですが、もし私がしてみたいと思う研究を行っている大学院、または企業があれば教えていただけますか?回答を心待ちにしております。

掲載日: 2010.4.7

A:

 「ES細胞やiPS細胞から人体のすべての器官を作りたい」という希望を満たせる大学院または企業は無いか?とのご相談です。大変野心的なご希望でそれ自体を否定はしませんが、一方で、例えば「太陽系の(「宇宙全体の」とまでは言いません)全ての惑星に行ってみたい」というような希望に似て、現実離れしたご希望のようにも思います。
実は、ESやiPS細胞から哺乳類の全ての器官を作ることは、マウスではすでに行われています。ESやiPS細胞をマウスの初期胚に移入して発生させると、通常の細胞とES/iPS細胞のキメラマウスが誕生し、ES/iPS細胞が生殖系列の細胞(卵子または精子)に分化していれば、キメラマウス同士を掛け合わせると、ES/iPS細胞だけからなる個体が誕生します。即ち、マウスの全ての器官がES/iPS細胞から作られました。現在、この方法は哺乳類の遺伝子改変に繁用されている方法ですから(最初のES/iPSにin vitroで遺伝子改変した細胞を使う)、類似の研究はかなり多くの施設で行われていると思います。ただ、この方法は人間に応用すると違法(少なくとも子宮に戻すことはできない)ですから、「人体の全ての器官」(つまり人体そのもの)を一度に作ることは許されません。
一方、人体のある特定の器官であれば、許される可能性があるかもしれません。例えば、ある臓器、例えば膵臓が作れないように遺伝子改変したブタの初期胚に正常なヒトES細胞を移入して発生させ、もしも一見正常なブタが生まれてきたとすると、そのブタの膵臓は人間の細胞からできている可能性があります。そうすると、ヒトES細胞で膵臓を作ったということになるのかも知れません。但し、このような試みが倫理的に許容されるか否かについては、本文の筆者は肯定も否定もしませんので、念のために書き足しておきます。
以上のように、生物が本来もっている個体発生機能を全く利用しないで、完全に試験管内で器官を作ることには、今のところ、ヒトに限らずマウスも含めてどのような器官についても成功していません。
最初の「惑星」のたとえで言うなら、以下のような問いにどのように反論するか考えてみてください。
問い:各惑星は望遠鏡や惑星探査機で地球にいてもかなり分かるようになってきている。なるほど、火星であれば、生命が存在するかもしれないし、ヒトが住める環境が作れるかもしれないので、行ってみる価値はあるだろう。しかし、そのような可能性と無関係に全ての惑星に行く必要は無いのではないか?全ての惑星の表面に人間が行くこと自体に何の意味があるのか?
膵臓や腎臓など、一つの臓器を作る事ができれば、それ自体非常に大きな意義がありますので、今のところ、それぞれの研究室でそれぞれの努力を続けている段階です(組織らしきものはできても、臓器まではほど遠い)。一つの研究機関でヒトの全ての器官を作る研究を並行して行っているところはないと思います。むしろ、in vivoかinv vitroか、など、どのような研究手段を指向するのか、また、生命の真理を探求するのか、臨床応用して病気を治すのか、研究の目的をどちらに向けるのか、というようは方面から、考えてみるのも良いのではないでしょうか?
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