専門分野:耳・鼻・咽頭
難聴治療
慶応大学の岡野教授らによる内耳に薬剤注入する難聴治療はどこまで進んでいるのですか?
掲載日: 2015.8.07
A:
このご相談は、2013年に慶應義塾大学の岡野栄之先生らのグループが発表した論文(Kunio Mizutari, Masato Fujioka, Makoto Hosoya, Naomi Bramhall, Hirotaka James Okano, Hideyuki Okano and Albert S.B. Edge. “Notch Inhibition Induces Cochlear Hair Cell Regeneration and Recovery of Hearing after Acoustic Trauma. Neuron. 2013 Jan 9; 77(1):58-69)のその後の経過についてです。この研究では、内耳に低分子化合物を投与することで、音の振動を神経の電気的信号に変換する有毛細胞が周囲の支持細胞から再生し、聴力が改善した、というマウスでの実験結果を報告したものです(詳細はhttp://www.keio.ac.jp/ja/press_release/2012/kr7a4300000bdsof-att/130110_1.pdf (慶應義塾大学の報道関係者向け文書)や、当相談室の過去の回答(文番号509)などをご参照ください)。
その後、本年になってこの研究に関連する総説(Fujioka M, Okano H, Edge AS. Manipulating cell fate in the cochlea: a feasible therapy for hearing loss. Trends Neurosci. 2015 Mar; 38(3):139-44.)が出版されています。それによりますと、この再生効果をより良くする低分子化合物の発見が将来の臨床応用につながるであろう、というふうに書いてあります。聴力の鍵を握る有毛細胞が再生するというすばらしい研究成果ですが、臨床に応用するまでにはさらなる研究が必要と考えておられるようです。
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