NPO法人再生医療推進センター

再生医療相談室 回答ページ No.592


専門分野:幹細胞など基礎

成体幹細胞による再生医療の適用疾病

20数年前から大腸憩室出血に苦しむ73歳男性です。東京医科歯科大学で成体幹細胞によるクローン病等への再生医療に成功したとの記載がHPや記事で見受けられますが、実用化の見当しや私のような他の大腸疾患についての適用について情報がありましたら教えて下さい。
残された時間も少ない一人として心待ちにしております。

掲載日: 2017.02.18

A:

 一般的な大腸憩室は、大腸の粘膜がそれを包んでいる筋層の隙間からはみ出たことによって形成される大小さまざまな大きさの小部屋のことです。通常は無症状ですが、時に、腸管の運動異常や炎症(憩室炎)、出血、狭窄、さらに穿孔(穴があく)の原因になることがあります。
 ご相談にあります「成体幹細胞によるクローン病等への再生医療」というのは、腸管上皮(粘膜の一番表層にある層)の細胞を培養して、粘膜が損傷された部位に移植することで治療を行おうとするもので、皮膚で言えば、やけどなどで損傷を受けた部位に表皮の培養細胞を貼り付けて治すのと同じようなコンセプトです。ただ、腸管は体内にあって、細胞を移植するのは皮膚ほど容易ではありませんので、良い移植方法が確立するまでにはもう少し時間が必要かもしれません。
 大腸疾患に対する再生医療ですが、今のところ腸管上皮の移植による再生が主体で、このような方法はクローン病に限らず、潰瘍性大腸炎を含む粘膜病変を主体とした疾患の治療に使える可能性がありそうです。一方、大腸憩室は、普通の粘膜が筋層の隙間からはみ出ることによって起こるので、炎症や出血といった粘膜の問題が2次的に生じるとしても、最初から粘膜自体に問題がある訳ではありません。従って、この方法で憩室自体を治療するというのは、残念ながら、難しいのではないかと思います。  腸管の再生医療としては、組織工学的な手法を用いたり、ES細胞やiPS細胞から分化誘導して、腸管の全層(粘膜と筋層)を作るような研究も行われております。ただ、大腸憩室の治療に使えるかどうか、現時点ではその可能性はあまり高くないかもしれません。
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