専門分野:脳・神経・脊髄
交感神経節切断後の再建可能性について
多汗症手術を受け片側の交感神経節を3箇所切断(焼灼)しました。交感神経を切断することでの合併症というのはすさまじく、この手術を受けて約7年経ちますが、未だに(いわゆる)代償性の多発汗を始め、温痛覚障害、ドライマウス、利き手の完全無汗など一言では説明しきれない障害と付き合う生活を余儀なくされています。※個体差は有ります
私は、切断された交感神経が可能な限り本来の働きを取り戻すために、可能な限りの純粋な神経再建を望んでいます。
例えわずかであったとしても、交感神経の再生研究者がいらっしゃることを期待しますが、2018年5月現在の再生医療技術をもってしても、交感神経を再建治療することは、まだ遠い未来の話しなのでしょうか。
研究や治験といわれる動きがどの程度進んでいるのか、ご教授をお願いいたします。
(追記)交感神経の再建に関して、ご相談ができる大学病院や担当課があれば、ご教授をお願いいたします。
掲載日: 2018.06.11
A:
多汗症に対する交感神経切除後の合併症で苦しんでおられる様子、心からお見舞い申し上げます。
唾液腺に分布する自律神経(交感神経と副交感神経)を切除すると一時的にその機能が低下しますが、時間をかけて自律神経が再生してくればその機能も改善する、という動物実験の結果は報告されています。しかし、交感神経の中継点であり、他の部位の神経細胞とも複雑に連絡している交感神経幹の一部を切除した場合の機能回復については十分に理解が進んでいるとは言えないのが現状と思います。同じように、代償性発汗が発生するメカニズムについても、その詳細は分かっていません。
「交感神経の再生」というようなキーワードでネット検索や文献検索を行っても、有用な情報はほとんど出てこないのが現状のようです。否定的な見解ばかりで誠に申し訳無いのですが、現状では交感神経の再建、再生については、多くの研究者が研究している領域にはなっておりません。
かなり古い話ですが、2004年の日本血管外科学会総会で、石巻市立病院麻酔科の伊達久先生が「胸腔鏡下交感神経節切除術の再手術」という演題を発表しておられ、その中で、術前の状態に戻す手術は「なかなか良い結果は得られていない」とされています。一方、多汗症が再発した場合に再手術を行う場合もあり、そのなかには、「胸部交感神経幹は癒着のために同定できないことが多いが,まれに見える場合は太さも以前とほぼ同様であることが多い」とされていますので、自然に回復する場合もあるように思われます。
なお、多汗症を対象に診療している診療科はかなり多様で、美容整形や皮膚科が対応している場合もある一方で、手術は胸腔からになりますので、胸部外科が対応していたり、元々この手術は血管を拡げる手術でもありますので血管外科で行う場合もあります。また、自律神経の問題になりますので、神経ブロックなどを行っているペインクリニックでも対応している場合があるようです。
日本皮膚科学会では、「原発性局所多汗症診療ガイドライン2015 年改訂版」を公開しており( https://www.dermatol.or.jp/uploads/uploads/files/guideline/genpatuseikyokusyotaknsyouguideline2015.pdf#search=%27多汗症+診療ガイドライン%27)、この執筆者(皮膚科だけでなく、外科系の先生なども入っているようです)であれば多汗症の診療経験が豊富なのではないかと思われます。
良い情報がなくて恐縮ですが、信頼できる医師によく相談して、治療に当たっていただくことを希望致します。
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