NPO法人再生医療推進センター

再生医療相談室

No.698 脳損傷の分類と特徴

項 目

内 容

専門分野脳・神経・脊髄
質問タイトル脳損傷の分類と特徴
質問内容

高血圧等の自発性脳溢血と交通事故等の外傷性の脳損傷について

  • 1.両者のレントゲン所見で脳出血部の差異はどんなふうに異なりますか(素人が写真を見て分かるような差異か)?
  • 2.サンバイオ社が脳神経細胞再生医薬品SB623(脳細胞の栄養成?)を開発しておりますが、外傷性脳損傷の治験には有効ながら慢性脳損傷には効かなかったようです。どんなことが考察されますか?
  • 3.脳溢血で手足のシビレはよくある症状ですかそれとも稀な症状ですか?
  • 4.そのしびれに対しては現在のところ「リリカ錠」しか有効薬はありませんか?
掲載日2020年06月19日
回 答

一般的な脳出血と外傷性脳損傷について回答します。

  • 1.まず、発症の原因が違いますから、臨床的にはこれらを間違えることはほぼありません。その上で、頭部のレントゲン所見ですが、一般的なレントゲン写真(単純撮影)では骨は見えますが、脳自体は写りませんので、ご相談にある「レントゲン所見」は頭部CTの所見と考えます。脳出血では出血がありますので、血管外に流れ出た血液が存在する部位が高吸収域として確認できます。一方、外傷性脳損傷というのは、CT上明らかな所見を認めない様な脳震盪に始まり、脳挫傷・びまん性軸索損傷(いわゆる「揺さぶられっ子症候群」で起こる白質部の点状出血など)や、脳やその周辺の血管が破綻した結果により起こる出血(くも膜下出血・硬膜下血腫・硬膜外血腫・脳内血腫)が起こる場合もあります。そのほか、外力がある程度強い場合は骨折も起きますので、一般的にはCT写真だけで素人が見てもわかる様な差異があると思います。
  • 2.サンバイオ社の治験結果についてですが、「慢性脳損傷」(実際には2019年1月に発表した慢性脳梗塞後の麻痺に対する治験の結果)に効かなかった原因は幾つかの可能性が考えられます。技術的には、投与量・投与方法や、評価方法が異なれば、結果が違っていた可能性も考えられます。しかし、結局のところ、患者さんがその治療を受けて良かったかどうか(患者さんの主観的な満足度)が最終的にその治療が行われる様になるかどうかを決めることになると思いますが、今回の検討では、客観的な指標の評価は行われましたが、主観的な満足度は測定されていない様です。
  • 3.「しびれ」は多くの脳障害に起因する疾患の中で珍しい症状ではないと思います。ただ、「しびれ」の症状は各種あって、長時間正座をして足がしびれた時の様な「ジンジン」・「ビリビリ」する様な感覚や、感覚が鈍いこと、また、麻痺を「しびれ」と表現する患者さんもいらっしゃいます。
  • 4.「しびれ」に効く薬剤は、上記3の症状に応じて選ぶべきものと思います。多くの薬剤に効果が期待できますから、症状に合わせて選択すれば良いと思います。また、漢方薬やリハビリテーションが有効な場合もあります。特に害がない様な治療法を色々と試みるのも一つの方法かもしれません。担当の医師とよく相談されて、納得できる医療を受けてください。