NPO法人再生医療推進センター

再生医療相談室

No.712 再生医療の範囲について

項 目

内 容

専門分野脳・神経・脊髄
質問タイトル再生医療の範囲について
質問内容

間葉系幹細、IPS細胞の治療をはじめとして研究も進んでいますが、高次機能障害ですと歩行障害、記憶障害など日常における最重要かつ目立つ症状に対しての効果のみが実験結果として記載されています。

自分は、感情障害、器質性ED、注意障害などとなったのですがサンバイオの薬のような細胞が復活するということはこういうことにも効果があるのでしょうか?

脳の一部が損傷すると、EDとなったり、感情がなくなったり、記憶障害が起こるということは歩行障害同様ケースとして多いようですが、実験結果として記載されているケースがないです。変な話ですが、感情を感じる細胞が元に戻るイメージでしょうか?

また、サンバイオの場合、頭部外傷に対しては効果が見られたが、脳梗塞には効果が見られなかったという書き方をしてますが、病名がはっきりと分からない場合はどのような治療になるのでしょうか?

発症が何年も前のことなので、当時脳炎だったのか、頭部外傷だったのか、熱痙攣による高次機能障害なのか医師でも今では分からないようです。

長くなりましたがお答えいただけたらと思います。

掲載日2020年06月26日
回 答

高次脳障害に対する再生医療の可能性についてのご相談かと存じます。

「サンバイオの薬」の場合、基本的に間葉系幹細胞(以下MSCと略)の性質を持った細胞製剤の様ですから、パラクライン(細胞が分泌する増殖因子などの作用によって周囲の細胞に効果を及ぼす)の作用が主になりますので、神経細胞に対しては一般に効果が期待できると思います。例えば、神経細胞が軸索を伸ばしてネットワークをより強固なものにするイメージです。従って、高次脳障害にも有効である可能性は考えられます。

ただ、この薬の場合は、脳内投与による効果となっていますので、高次脳障害の患者さんのどこに薬を投与するかが問題ですし、投与する場所によって効果が異なるかもしれません。そもそも、高次脳障害に有効であるかどうかは、高次脳機能を動物実験で評価できる系が存在しない現状では(霊長類を使ってその研究はされていますが、高次脳機能障害の動物モデルと言えるものは現状では存在しない)、患者さんに投与して効果があるかどうかを見るしかない状況です。

以上の様な状況でお答えするとするならば、間葉系幹細胞の投与(はっきりした病変の部位が分からない場合は、脳内投与ではなく、全身投与の方が良いと思います)が有効である可能性はあるが、その可能性を確認するにはやって見るしかない、ということになると思います。ただ、実際に行うとなると、科学的な証拠が無い状態で実施することになりますから、かなりの勇気が必要です。一方、動物実験で確認した上で行うとすれば、まず動物モデルを作らなければいけませんから、かなり先の話になります。自由診療で行うのであれば、お金はかかりますが、どこかの医者がやってくれるかもしれません。ただ。効果のほどはやってみないと分かりません。

再生医療が今まで有効な治療法が無かった各種の疾患に治療の可能性を提案する一方で、患者さんや医療従事者に難しい選択を迫っているのが現状かと思います。