NPO法人再生医療推進センター

再生医療相談室

No.741 脳出血に対するミューズ細胞の治験について

項 目

内 容

専門分野脳・神経・脊髄
質問タイトル脳出血に対するミューズ細胞の治験について
質問内容

初めまして。一昨年、脳出血で倒れ半年間の入院を余儀無くされ右半身に麻痺を患い前職も辞め人や社会と関わりを持つのが嫌になりとても辛い日々を過ごしてます。この度ニュースでミューズ細胞の事を知り一筋の光が見えたのですが、問合せてみても脳梗塞には対応しているが脳出血にはまだ、対応されてないとの事でした。脳梗塞と脳出血では病気になる過程は違いますが症状はほぼ同じです。今後、脳出血への治験が行われる予定は全く無いのでしょうか?脳出血に限らず、全ての脳卒中に対応出来るようになることを切に願います。麻痺の恐ろしさは自分が普通の人達みたいに動けない事に負い目を感じ人々や社会との関係を絶ってしまって心が病んでしまう事なのです。日々、大変なご苦労と努力をされてると思いますが、一人でも多く麻痺で苦しむ人達の希望の光になって頂ける事を切に願います。

掲載日2021年03月06日
回 答

脳梗塞と脳出血に対する再生医療の取り組みの差については以前にも類似のご相談があり、回答しております。こちらもご参照ください。

ご相談の中にもあるとおり、「脳梗塞と脳出血では病気になる過程は違いますが症状はほぼ同じです。」というのはその通りかと思います。その上で、現在行われている薬(再生医療製品も含みます)の承認制度では、適応疾患や用法・用量などは、治験の成績などをもとに、厳密に規定されています。そこまで行かないと、薬としては流通できないわけです。

ということは、薬を作る企業としては、膨大な費用と時間をかけて治験を行いその結果をまとめて承認を得るわけですから、一番多い疾患で、遺伝情報や体質などの患者さん個別の事情を無視して、最も一般的に受入てもらえるような安全で有効なデータを治験で得なければならないことになります。そういう意味では、現在のところ脳梗塞の治験データはある(または溜まって来ている)が、脳出血のデータは無い、という状況はご理解いただけるかと存じます。

その上で、本来、脳梗塞による麻痺の回復に有効性が認められたものを、脳出血後の麻痺にも有効ではないかと考えて使う場合は、薬の「適応外使用」と言われ、医療保険が支払われなかったり、副作用が出た場合は糾弾されることもあります。この「適応外使用」を避けるためには、脳出血後の麻痺に対する安全性・有効性を確認するための適応拡大のための治験が別途必要になり、そこでまた費用と時間がかかることになりますので、企業側が消極的になるのもご理解いただけるかと思います。しかし、一方で、そのような患者さんや患者さんを治したい医療関係者からすると、使ってみたいのは山々です。

ということで、まずは脳梗塞に対する治験を行っていただき、それが承認された暁には、適応拡大の治験で脳出血後の麻痺に対する治療の安全性と有効性を確認してもらうという方向性になるのではないかと考えます。ただ、そうなると、ご相談のような脳出血の患者さんに届くまでにかなりの時間がかかることが予想されます。今治療を受けたい場合は、自己由来の間葉系幹細胞の輸注(これとMuse細胞投与との有効性の差は比較試験で調べる他はありませんが、まだ調べられていないと思います)を自費診療(治療用の費用は自己負担)で受けていただくしかないのが現状かと思います。