項 目 | 内 容 |
---|---|
専門分野 | 脳・神経・脊髄 |
質問タイトル | 間葉系幹細胞について |
質問内容 |
ADSCとADRCの2種類が存在することに気づきました。 率直にご質問させて頂きたいのですが、ALS患者に対する治療に関して、両方の種類のメリットとデメリットが知りたいです。 私自身、細胞の培養により、数が増えれば増えるほどよいものかと思っていましたが、細胞自体の精度の問題等を考慮してみると全くわからなくなってしまいました。 神経細胞の修復と言う点が一番のキーポイントになるのでしょうか? 是非、専門家のご意見をお伺いできないでしょうか? 宜しくお願い申し上げます。 |
掲載日 | 2021年09月14日 |
回 答 |
ADSC(Adipose-Derived Stem Cells)とADRC(Adipose‑Derived Regenerative Cells)をALS(筋萎縮性側索硬化症)の治療に使った場合のメッリトとデメリットについてのご相談です。どちらの細胞も自己由来ということで説明します。 ADSCは、脂肪組織から培養できる間葉系幹細胞を2D培養で増やしたもので、培養される細胞の遺伝子発現などもほぼ同じものと考えられますが詳細はなお議論があります。一方、ADRCの方は、脂肪吸引で吸引した脂肪組織を原料として、これからCelution systemという機械で酵素製剤を使って分離され、それを培養することなくそのまま患部に投与するものです。従って、ADSCは作る施設によって細胞の分離法(培養の元になる細胞を取る方法です)や培養方法が少しずつ異なりますが、ADRCの方は吸引した脂肪細胞からほぼ同じ会社の機械を使って作りますから、作る方法にはあまり差はありません。しかし、患者さんが異なると、方法は似ていても結果が異なることはありますから、ADRCの方が結果が安定しているとは言えません。 あと、異なる点は治療回数と細胞数です。ADRCの方はその都度脂肪吸引が必要で、吸引する細胞も300mL程度と結構な量ですから、あまり何度も繰り返すような治療法ではありません。また、培養もしませんので、その時に取れた細胞数が使える限界になります。一方、ADSCは培養しますから、増え方が良ければ、少量の脂肪細胞からかなり大量の細胞が取れますし、取れた細胞をまた培養することも可能ですから、一度脂肪を取れば、結構な回数の治療が可能になります。 ということで、ADRCは通常1度しか行わないようなケガの修復や虚血肢の治療に増殖因子の分泌や血管新生の増強を狙って使われることが多いです。一方、ADSCの方は、ALSのような従来有効な治療法が無かった疾患の治療も含めて色々な疾患に試みられていて、一部の症例にはかなり顕著な効果もみられています。ただ、どのような疾患のどのような段階に有効かなどと言うまとまった検討は結果は得られておらず、これから症例を増やしていく段階にあると思われます。また、培養を伴うことで、何百万円単位の費用がかかることも問題で、今後もいろいろと考える部分が多いものと思われます。 |
プライバシーポリシー
再生医療相談室は2021年6月5日に発展的に解散したNPO法人再生医療推進センターの「再生医学、再生医療の実用化を通して社会への貢献を目指す」と言う理念を受け継いだ有志にて運営されています。
Copyright © 再生医療相談室 All rights reserved.