大阪大学の西田幸二教授らのチームは、角膜上皮幹細胞疲弊症注1)に対して、iPS細胞から作製した目の角膜の細胞を患者さんに移植する臨床研究の計画が2019年3月5日、厚生労働省の部会で、条件付きで了承(臨床研究の計画は「No.19 再生医療トッピクス」を参照)されたことを受け、早ければ6月にも1人目の移植を予定しています。他家iPS細胞を角膜の細胞に変化させ、厚さ約0.05mmのシート(300万~400万個の細胞)を移植する計画です1)。
一方、「第6回元気の出る再生医療 4.再生医療を支える企業の現状」で紹介しました(株)ジャパン・ティッシュ・エンジニアリング(以下、J-TECと記す)は、角膜上皮幹細胞疲弊症の治療を目的とした自家培養角膜上皮の製造販売の承認申請を厚生労働省に行いました。同社は再生医療等製品及び関連製品の研究開発、製造、販売を主要な事業目的としており、2007年10月29日に日本初のヒト細胞・組織利用医療機器として自家培養表皮(販売名:ジェイス)の製造承認を取得しました。患者自身の皮膚組織を採取し、分離した表皮細胞を培養し、シート状に形成して患者自身に使用する「自家培養表皮」で、同品は再構築された真皮に移植され、生着し上皮化することにより創を閉鎖するとされています。
さらに、2012年7月27日に、整形外科領域におけるヒト由来細胞・組織加工医療機器として日本初の自家培養軟骨(販売名:ジャック)の製造販売承認を取得しました。同品は、患者から採取した健常な軟骨組織より分離した軟骨細胞を、アテロコラーゲンゲルに包埋して培養し、患者自身に適用する自家培養軟骨です。
(株)ニデック注2)が開発を委託しているJ-TECは、角膜上皮幹細胞疲弊症の治療を目的とした、自家培養角膜上皮(EYE-01M)の製造販売承認申請を厚生労働省に行ったと2019年3月20日、発表しました2)。同申請は、眼科領域の再生医療等製品では日本では初です。
再生医療等製品としての目的は、患者さん自身の角膜組織の輪部から角膜上皮幹細胞を採取し、シート状に培養した自家培養角膜上皮を移植することにより、角膜上皮を再建させ、視力や眼痛、異物感、乾燥症などを改善させることにあります。モデナ大学(イタリア)のGraziella Pellegrini 教授とMichele De Luca 教授、大阪大学大学院医学系研究科の西田幸二教授らから角膜培養に関する技術を導入し、国内で開発を進めていました。
(株)ニデックは、J—TECに開発委託している自家培養角膜上皮の有効性及び安全性の確認を目的とする治験について、大阪大学医学部附属病院をはじめとする4施設で行っておりました3)。患者さん自身の角膜組織を原材料とし、培養角膜上皮用温度応答性培養皿(株式会社セルシードとの共同開発)にて培養・製造した自家培養角膜上皮シートを、片眼性の角膜上皮幹細胞疲弊症と診断された患者さんに移植するものです。
(用語解説)
(参考資料)
(NPO法人再生医療推進センター 守屋好文)