今日6月21日は世界ALS/MNDデーです。筋萎縮性側索硬化症(ALS)は日本で患者数(平成24年度医療受給者証保持者数)9,096人の難病(指定難病2)で、根治的治療法は無く、通常は2~5年で死亡することが多いと言われています。
日刊SPA!に本日掲載された次の記事において、【全身が動かなくなる難病ALSに、初の治療法。「自力で寝返りを打てた」例も】、名古屋大学名誉教授・上田実氏は、「ALS(筋萎縮性側索硬化症)の症状を、副作用のリスクなしに改善させたのは、私が知る限り培養上清による治療が世界で初めてです」と述べました。上田氏の治療では幹細胞を培養したときにできる培養液の上澄みを用いています。培養上清には、幹細胞から培養液にしみ出したサイトカインや成長因子などのタンパク、一方遺伝子の断片であるエクソソームなど、再生を促進する生理活性物質というものが豊富に含まれています。培養上清治療では幹細胞そのものではなく、幹細胞から出た無数の生理活性物質を含む歯髄由来幹細胞の培養上精を使います。幹細胞治療には、培養した幹細胞ががん化したり、幹細胞移植後に血管の中に血栓(血液の塊)ができてしまうなどのリスクを伴うことがわかっている。こうした幹細胞による再生医療のリスクを克服したと話しています。
一方、自己の間葉系幹細胞については適切な培養と投与方法であれば癌化することはなく、極めて安全であることが知られています。米国ハーバード大学とその関連病院であるマサチューセッツ総合病院、メイヨークリニックらの研究グループでは48例のALS患者で無作為化比較試験を行い、投与群で有意差のある効果を認めています1)。2013年山岸氏らは世界で初めてALS患者に対して幹細胞投与を行い、ALSの進行を抑制することに成功しています2)。彼らはその後も治療研究を継続し、2022年の21回日本再生医療学会総会シンポジウムで幹細胞治療の成果(ALSに対する効果、認知症;アルツハイマー病に対する効果)を発表していますが、現在まで副作用の報告はありません。
幹細胞治療が一般化して来るに従い,治療施設も玉石混交となりつつあります。施設によっては万病に効くかのように謳っている所もありますので、そのような甘言に惑わされないよう気をつける必要があります。しかし、現在治療方法が無い難病で苦しまれている方々にとって、再生医療が朗報であることは確かのようです。
注意)この治療法はまだ確立されたものではありません。再生医療は急速に普及しつつあリますが、それに伴い施設の効果について差が生じており、施設認定の妥当性が問題になってきています(日本再生医療学会)。
(adipocyte + neuron / 20220621)
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