再生医療の進展には目を見張るものがあります
それに関するレビューが日本医師会英文誌(JMA Journal)に掲載されましたので紹介します。(→原文へリンク)は国立研究開発法人科学技術振興機構 (JST))の「科学技術情報発信・流通総合システム」(J-STAGE)から閲覧できます)
再生医療とは身体の組織や器官の障害を”幹細胞”を用いて治療する医療です。
幹細胞には
があります。
間葉系幹細胞は体内の様々な組織から採取できます;骨髄、歯髄、脂肪組織など。
脂肪組織由来幹細胞(ADSC)の長所は
等があります。
投与方法は病巣への移植、髄液内投与、点滴投与が考えられますが、脂肪組織由来幹細胞を含む間葉系幹細胞にはホーミング作用(homing effect)を持つことが知られています。これは、間葉系幹細胞が病変部位に集まる性質で、そのため点滴投与しても障害されている組織や器官に集まりやすいため効率的に治療が進むと考えられています。
日本では再生医療等安全性確保法に従い間葉系幹細胞の治療を実施することが可能です。認定再生医療等委員会での審査で承認され厚生労働省への届け出が受理される必要があります。
注)日本ではごく一部を除いて健康保険の対象にはなっていません(自費診療になります)。
保険適応が認められているものには以下の様なものがあります。
例えば、ステラミック注を作るには、患者さん自身の骨髄液と血液が必要となります。採取した骨髄液から血液(血清)を使って骨髄間葉系幹細胞を培養します。培養した骨髄幹細胞を点滴よって、患者さんの体内に戻します。事故など外傷による脊髄損傷の治療に用いられます。一回分の薬価(1回投与分の骨髄由来間葉系幹細胞の料金)は14,957,755円です(中医協 総-2 31.2.20)。製造原価が1,000万円(税込み)を超える為高額ですが、保険適応がある為高額療養費制度を受けることができます。
再生医療は、病気や怪我で失われた組織を“再生”するのですからある意味【根本的治療】です。
再生医療に用いられる細胞は”再生能力”がある細胞で幹細胞と呼ばれます。
iPS細胞、ES細胞、間葉系幹細胞の3つが代表です。
間葉系幹細胞の分化能はiPS細胞やES細胞に比べて”再生能力”は弱いのですが、遺伝子操作を加えておらず、癌化の危険性が殆ど無いことから、未分化のまま投与することが可能です。一方、iPS細胞やES細胞はその分化能が強力であるがゆえに、未分化のままヒトに投与するとその分化を制御することが難しく、奇形腫など腫瘍形成が生じてしまいます。
間葉系幹細胞のヒトへの最初の応用は1957年トーマスらによる骨髄移植で、その功績により1990年ノーベル医学生理学賞を受賞しています。
間葉系幹細胞の一つ、脂肪組織由来幹細胞は2001年Zukらによって発見されました。
間葉系幹細胞は小児期のみならず生涯存在することが分かっています。
間葉系幹細胞は分化能に加えて様々なサイトカイン、栄養因子を分泌することが知られています。証明されているものを列挙します。
間葉系幹細胞が治療に有効であると考えられる理由としては
現時点でヒトへの臨床応用が試みられている疾患には
等があります
間葉系幹細胞の投与方法については主に点滴投与(血管内)と髄腔投与が行われています。
間葉系幹細胞は①腫瘍形成の危険性が殆ど無いこと、②ホーミング作用がある為、未分化の状態で全身投与が可能です。脊髄損傷のネズミに血管内投与した結果、4週間後に30%の細胞が障害部位に集まっていました。この時、脳には8%、腎臓には12%、肝臓に7%、肺に3%集まっていたと報告されています。
(neuron / 20230303)
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