COVID-19（SARS-CoV-2による感染症）の抗体はできますか？

COVID-19（SARS-CoV-2による感染症）の抗体はできますか？

はい。何種類もできます。

フリー百科事典『ウィキペディア（Wikipedia）』によれば、

抗体（こうたい、英: antibody）とは、B細胞の産生する糖タンパク分子で、特定のタンパク質などの分子（抗原）を認識して結合する働きをもつ。抗体は主に血液中や体液中に存在し、例えば、体内に侵入してきた細菌やウイルス、微生物に感染した細胞を抗原として認識して結合する。抗体が抗原へ結合すると、その抗原と抗体の複合体を白血球やマクロファージといった食細胞が認識・貪食して体内から除去するように働いたり、リンパ球などの免疫細胞が結合して免疫反応を引き起こしたりする。

B細胞とはリンパ球と呼ばれる白血球の一つです

新型コロナウイルス感染症（COVID-19）ではどうなっているのでしょう。COVID-19は人に感染した7番目のコロナウイルス（SARS-CoV-2）による感染症です。ですから抗原はSARS-CoV-2です。ウイルス全体が抗原といえるのですが、免疫細胞が“抗原”として認識するのは、ウイルスを包んでいる膜の表面にあるタンパク質などの「パーツ」です。タンパク質ごとに抗体が作られるので、仮に10種類の異なるタンパク質があれば10種類の抗体が作られることになります。更に一つのタンパク質に対して抗体が一つ作られるとは限りません。むしろ一つの抗原に対して幾つもの抗体が作られます。抗原と抗体は、時にカギと鍵穴に例えられるようにお互いが1対1対応します。タンパク質は立体構造をとっていて、そのいろんな部位を鍵穴と認識してカギ＝抗体が作られます。立体構造のため、免疫細胞が“鍵穴”まで近づけずカギが作られないこともあります。

参考：動物などに抗原を投与した時にできる抗体をポリクローナル抗体（幾つもの抗体の集合なので）と呼び、そこから抗体産生する免疫細胞一つを取り出して培養して作らせた抗体をモノクローナル抗体と呼びます。ポリクローナル抗体の方が抗原のあちこちに反応するため抗原をみつける感度は高くなります。モノクローナル抗体は単一の抗体ですから対応する部位だけに反応します。感度は低下しますが特異度は高くなります）

抗体は免疫グロブリンと呼ばれるタンパク質です。この免疫グロブリンにも5種類があると言われています。抗原が侵入して（ウイルスに感染して）最初に作られるのがIgM抗体、少し遅れて作られるのがIgG抗体です。

一つのウイルス（SARS-CoV-2）に対して幾つもの抗体が作られます。これは新型であっても同じです（新型の場合、「過去の記憶＝免疫」が無いため、免疫がある場合に比べて抗体が作られるのは一般に遅くなります）。

ウイルスに感染した時、通常幾つもの抗体が作られます。でも抗体が作られたらといってウイルス感染が治るとは限りません。治す力のある抗体もあれば、そのような力がない抗体もあるからです。ウイルスが変異してしまえば、ターゲットが無くなってしまう抗体もあるでしょう。抗体の作られやすさや（抗体量）、抗原へのくっつきやすさはまちまちです。抗原となるタンパク質の形状などに大きく左右されるからです。

抗体検査で、こうした幾つもの抗体をきちんと調べるのは大変です。例えば、抗体があるかどうかを調べるために、その抗体１に対する抗体２を作って調べる場合、反応する抗体しか見つけられません。逆にいろんな抗体に反応する抗体３を作って調べたとすれば、旧型コロナに対する抗体にも反応してしまうかも知れませんね。コロナの抗体検査といっても様々です。

ワクチンも同様です。「ワクチンで抗体が出来ること」とその「ワクチンが有効であること」とは同じではありません。抗体ができてウイルスにくっつくだけでは不十分だからです。その抗体がウイルスの増殖を止めることができるかどうかにかかっています。ウイルスが人の細胞に入り込む仕組みは、例えばウイルスを取り囲む膜にあるスパイクと呼ばれるタンパク質（ウイルスを包んでいる膜の表面にあるタンパク質などの「パーツ」の一つ）がヒト細胞表面にある受容体タンパクにくっついてウイルス本体＝つまり遺伝子がヒト細胞に入ります。ウイルスは細胞の外で増えることはできません。細胞に入り込めれば増殖することができます。ですから、このスパイクにくっつく抗体ができて、スパイクの形が変わったり、スパイクが抗体に覆われてしまって、ヒト細胞の受容体にくっつけなくなれば、ウイルスは増えることができなくなります。そのような抗体を作るワクチンができるかどうかです。また都合の悪いくっつき方をして副作用が出てしまってもダメです。

マトメ【１つのウイルス＝１つの抗原＝１つの抗体が対応】ではありません❣️

有効なワクチンが一日も早くできるといいですね。