専門分野: 耳・鼻・咽頭
Q: 突発性難聴について
私は2年前に突発性難聴になりました。 感音せいの難聴は、神経などが損傷をうけているために、現在の医学では治療できないと聞いています。 わらをつかむ重いで、東洋医学に頼ったこともありましたが、わらは、しょせんわら、でした。 今後の展望として、希望の持てるのはいつごろになるでしょうか? 最後の希望を再生医療にかけていあます。 おいそがしいいところ申し訳ありませんが、是非お聞かせください。
掲載日: 2008.11.16
A:
突発性難聴に関しましては、以前、再生医療相談室に回答を掲示しています。再生医療の研究開発に関するその後の状況についてお示しいたします。 内耳に障害を来たす疾患はいろいろありますが、突発性難聴もそのひとつであると考えられています。現在、海外ではもちろんのこと、わが国においても、慶応大学、京都大学、東京大学等で内耳の再生に関する研究が行われつつあります。内耳の再生に関する研究が始まったのは比較的最近のことであり、臨床応用に至るまでにはまだいくつかの道のりがありますが、将来的に再生医療により内耳の機能の修復が可能になるものと大きな期待が寄せられています。2〜3年前に、内耳に内耳細胞の元になる(内耳細胞に分化する・内耳細胞になっていく)前駆細胞(幹細胞)が存在することが報告されて以来、内耳細胞の再生に関する研究が急速な広がりを見せつつあります。内耳の神経にある感覚上皮細胞には有毛細胞と支持細胞がありますが、有毛細胞と支持細胞には共通の幹細胞があり、支持細胞の幹細胞が有毛細胞に分化し得る(有毛細胞になり得る)ことが報告されています。たとえば、内耳の有毛細胞の機能が傷害されても、内耳の支持細胞から幹細胞を分離して(取り出し)、その幹細胞を内耳の機能が傷害された患者さんの内耳に投与すれば、幹細胞が有毛細胞に分化(有毛細胞になる)し、内耳機能が回復することが想定されます。ただ、今のところ、内耳の幹細胞を分離する(取り出す)技術が確立していません。内耳の幹細胞を分離する(取り出す)技術が確立できても、臨床応用に至る次の課題として、再生医療に必要な十分量の幹細胞を取り出す技術を確立する必要があります。再生医療は、将来的に内耳性難聴に対して画期的な夢の治療を提供するであろうと考えられます。現実問題として、今のところ臨床応用に至るまでの期間は全く不明ではありますが、少なくとも4〜5年ぐらいの日時は要するものと思われます。但し、再生医療の分野では日進月歩の進歩が見られますので、研究面の新しい突然のブレークスルーがあれば、予想よりかなり短い期間内に臨床応用が開始される可能性も想定されます。私たちも、突発性難聴等の内耳性疾患に対する再生医療開発研究の一刻も早い研究の進展を心待ちにしています。
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