専門分野: 脳・神経・脊髄
Q: 脳機能再建について
脳に存在する神経細胞の少なくとも30〜40パーセントは再生する可能性があることがわかったとのことですが、脳梗塞で、損傷した運動野等の神経細胞も時が経てば、再生し、機能再建していく可能性があるということでしょうか?お答えいただければ、幸いです。
掲載日: 2006.8.30
A:
脳神経系の障害に対する再生医療については、再生医療相談室で取り上げています。また、脳外傷や脳梗塞等に関する最近の情報を付け加えましたのでご参照ください。 長年にわたって、脳神経細胞等の中枢神経系の細胞は再生しないと考えられてきましたが、7〜8年前に脳の神経細胞に幹細胞の存在が証明されて以来、損傷した脳組織を再生させることも可能であることがわかってきました。脳に存在する神経細胞のうち、中脳の細胞などを含めて脳全体の30〜40パーセントの細胞に幹細胞があることが報告されています。最近では、大脳皮質においても神経系の前駆細胞(幹細胞)の存在が報告されました。 脳の中枢神経系では、神経細胞同士が相互に作用し合い、複雑に絡み合い、神経回路網を形成しています。神経細胞が損傷してしまった脳の組織を再生させるためには、損傷した神経細胞を新たに補充し、神経回路網を再構築する必要があります。損傷した神経細胞自身が、時が経てば再生して機能が再建する、というようことではありません。神経細胞のおおもとである神経幹細胞を損傷部位に補充する(注入する、移植する)治療を行うことにより、神経細胞の再生と神経回路網の再構築を達成することができるということを意味します。脳の神経細胞に存在する幹細胞を、再生医療として有効に利用する方法の開発研究が熱心に行われています。もちろん、並行して、骨髄幹細胞や、ES細胞から脳神経細胞への分化をめざす研究も積極的に推し進められています。
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