専門分野: 糖尿
Q: DM(糖尿病)
再生医療でDMは完治してるのでしょうか?再生医療なら免疫抑制剤は必要ないのですね。
掲載日: 2006.8.30
A:
1型DMに対する根本的な治療としては、今のところ、膵臓移植、もしくは、すい島移植しかありません。すい島移植も細胞移植治療ですので、大きな意味で再生医療の範疇に入っています。但し、現状では免疫抑制剤を必要とします。再生医療にも、免疫抑制剤を必要とする治療法と、免疫抑制剤の必要の無い治療法とがあります。免疫抑制剤を必要とする現状のすい島移植でも、うまくいった場合には比較的長期にわたってインスリンから離脱することも可能です。すい島移植後に、インスリンから離脱したということは、移植したすい島細胞が機能している(うまく働いている)ことを意味します。移植したすい島細胞がうまく働いて間は合併症も起きませんので、その限りにおいては、治癒している状態といって差し支えないでしょう。しかしながら、何らかの理由で移植したすい島細胞がうまく働かなくなってしまうと、再び、インスリンが必要になってきます。その意味では、厳密には完治という表現は使えないかも知れません。実際には、すい島移植の大きな目的の一つは,合併症の予防にあります。たとえすい島移植後にインスリンから離脱できなくても、インスリンの投与量が減れば、合併症を予防する事が十分に可能なのです。すなわち、移植したすい島細胞が少しでも機能していれば、合併症を予防できますし、低血糖発作も防げるのです。 免疫抑制剤を必要としない再生医療の一つに、すい島細胞のカプセル化があります。すなわち、すい島細胞をカプセルで包んでカプセル化すい島を作成して治療に用います。この場合には、すい島細胞はカプセルによって免疫反応(拒絶反応)から保護されますので、免疫抑制剤は不要です。 また、最近、体の中にある幹細胞(骨髄細胞などの)からすい島細胞を分化させる(作る)研究が進みつつあります。自分の体の中にある幹細胞からすい島細胞を作ることが可能になれば、自分の細胞からできたすい島細胞を自分に移植することができるので、当然拒絶反応は起こりませんし、免疫抑制剤も不要になります。 カプセル化すい島や、幹細胞からのすい島細胞の作成が可能になり実用化すれば、もちろん免疫抑制剤は不要になりますし、将来的に糖尿病の完治も可能になるかもしれません。私達も、治療開発研究のブレークスルーと大いなる進展を期待しています。 糖尿病に対する免疫抑制剤の不要な再生医療は、将来的に実現可能な夢の治療ですが、まだ、少し時間がかかります。根本的な治療としては、現状では、再生医療の一つであるすい島移植が、患者さんへの負担も比較的少ない最善の治療法です。 ご自身は1型DMで、現在、すい島移植登録患者さんのお一人ということですが、一刻も早く適合したすい島移植の機会に恵まれますように切にお祈りいたします。
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