NPO法人再生医療推進センター

再生医療相談室 回答ページ No.447


専門分野: 耳・鼻・咽頭

Q: 聴力の回復治療

 今回このホームページを拝見し突発性難聴の後遺症の回復治療が、一般の耳鼻科にて広く受診できる事を願っています。
突発性難聴になり、耳鳴りと 難聴に悩んでおります。
阪神大震災のすぐ一週間後でした。年数が経った人は治療に期待できない! あきらめ! 仕事をする中での葛藤!
悩み初診から今でも耳鼻科にかかっていますが、聞こえはだんだん悪くなり、補聴器を購入しなければ、仕事が続けられなくなりました。
年数が経った患者も、再生医療の対象になるのでしょうか?
早く受診できることを希望しています。

掲載日: 2011.1.6

A:

 突発性難聴による聴力障害でお悩みのご様子、お見舞い申し上げます。
本年の11月末に京都大学で行われていた「突発性難聴に対するIGF1治療」の臨床試験の結果が公表されました。
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news6/2010/101130_1.htm
上記の京大病院のウエッブページと彼らの論文によりますと、その概要は、急性高度難聴症例で従来のステロイド治療の効果がなかった方25人の方に、生体吸収性徐放ゲル(ゼラチンを調整したゲル)を用いてコンビナント・ヒト・インスリン様細胞成長因子1を内耳に投与し、その後12週と24週の時点で感音難聴の回復を調べたものです。従来の治療法では概ね33%程度の患者さんで回復が期待できていたのですが、今回の治療では12週後に48%、24週後に56%(14人)の方に回復がみられ、従来法より勝っているという結果でした。ただ、この治療を受けられた方は、発症から15日から32日(平均23日)経過した方で、効果があった方の中で発症後の日数が最も長かったのが26日後でした。逆に言いますと、27日以上経過した6人の方では効果が認められた方はなかったのですが、26日以内であっても5人の方には効果がありませんでした。また、回復の度合いについては、完全に回復した方は無く、著明な(marked)改善が1名で残りの13名の方は軽微な(slight)改善でした。
さて、ご相談の「年数が経った患者も、再生医療の対象になるのでしょうか?」という点についてですが、今回のような全く新しい治療法を患者さんで初めて試みる場合は、従来の治療が無効であるが新しい治療法の効果が最も期待できるような(今回の場合は発症後比較的早期の)患者さんが対象になります。ただ、このような新しい治療法がより多くの患者さんに適応されて安全性が確立してくれば、治療対象も自ずから広がってくることは十分に期待できると思います。今回の結果からは、「発症後日の浅い患者さんの方が効きが良さそうだ。」という程度の印象を持ちますが、発症後どれくらいの期間が経過した患者さんまで有効なのか、という問題も重要なことですから、それを調べる意味でも、より時間が経過した方に試してみる意味はあると思われます。
ただし、この治療法が特効薬的にすべての患者さんに有効であるという訳ではありませんし、何年も経過した方に効果が期待できるかどうか分かりません。また、重症の合併症は無かったとはいえ、術後の耳鳴りとか軽い中耳炎のようなことが起こる可能性はあるようです。それでも試してみる価値があるかどうか、このあたりは人によって判断が分かれるのではないでしょうか。
なお、このような新しい治療法の研究はこれで終わりという訳ではありません。今後のいろいろな進歩を期待を持って見守って頂きたいと思います。
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