専門分野: その他
Q: バイオマテリアル
ネットでバイオマテリアルを使用して 血管新生を行い ASOなどで血管の閉塞して足がネクローゼになっていく人が助かる ということを知りました。 同じ方法で、爪でも 筋肉でも脂肪でも なんでも すぐにできるような気がしますが、 バイオマテリアルを使用して、生えなくなった爪を再生したり、筋肉が拘縮して変形した体の形を筋肉や脂肪を混ぜたバイオマテリアルによって変形を修復したり 歯を再生したりすることは 可能でしょうか? もし、やっているところがあれば教えて頂けませんでしょうか? それと、その方法は認可されているのでしょうか?
掲載日: 2011.4.3
A:
バイオマテリアルを用いた再生医療についてのご質問です。 まず、バイオマテリアル(「生体材料」と言い換えることもできます)についてですが、これは、人の体内に移植することを目的とした素材の総称で、金属やセラミック、プラスチックやタンパク質、多糖類など、多くの物質が含まれます。例えば、ブタのコラーゲンは、料理に使えば食材ですが、これに細胞を混ぜるなどしてヒトの体内に移植すればバイオマテリアルになります(もちろん、移植用のコラーゲンは特別に精製・加工し、安全性を確認する必要があります)。 さて、「バイオマテリアルを使って血管新生ができた」ことについてですが、例えばコラーゲンのようなバイオマテリアルを単独で使用しても、有効な血管新生は期待できないと思います。多くの場合は、コラーゲンに血管新生作用を持つ間葉系幹細胞のようなものを混ぜて、筋肉内などに注射することで血管新生を助長するとか、ゼラチン(コラーゲンから作られます)の小さい粒に血管新生作用を持つ増殖因子を含ませて注射するなどの方法が取られています。つまり、細胞や増殖因子とバイオマテリアルを合わせて使う事で、細胞や増殖因子の拡散を防ぎ、その場所でしっかりと作用を発揮させることができるということです。 そこで、「同じ方法で、爪でも 筋肉でも脂肪でも なんでも すぐにできるような気がします」についてですが、前に書きましたように、バイオマテリアル単独で爪や筋肉や脂肪の組織を作る事はできません。これらの元になる細胞やこれらを作る増殖因子があれば、それをバイオマテリアルと組み合わせて新たな組織を作る事ができるのです。筋肉や脂肪、歯の元になる細胞は幾つか知られており、これをバイオマテリアルと組み合わせて組織を作る研究は実際に行われています。ただ、爪の元になる細胞については、幾つかの研究は行われているようですが、未だ明らかな研究成果は得られていないと思います。 「やっているところがあれば教えて頂けませんでしょうか?」ということですが、筋肉の再生と脂肪の再生は別の事ですから、何の再生をやっているところかによって場所は異なります。「その方法は認可されているのでしょうか?」については、手術用の再建材料などについては認可されているものが多数ありますが(例えば人工骨とか人工関節、歯科のインプラントなどは立派なバイオマテリアルです)、これと細胞などを併用したものはほとんどが臨床研究として行われている段階です。
|