NPO法人再生医療推進センター

再生医療相談室 回答ページ No.461


専門分野: その他

Q: 放射線で壊死した直腸や尿道の再生医療

 10年ほど前に前立腺がんを小腺源放射線療法で治療し、がんは殺しましたが、後遺症として、直腸に穴があき、またここ2年ほどまえには尿道もおかしくなり、尿も直腸から(肛門)出るようになっています。病院は慶応大学病院の泌尿器科にお世話になっていますが
積極的な治療は出来ないとの話で何も治療はせず、痛み止(貼り薬)を処方してもらっています。放射線で壊死した直腸とか尿道の再生治療を研究している大学・病院があればご紹介願いたい。

掲載日: 2011.4.3

A:

  尿道の再生医療は米国では臨床応用されています。組織工学の手法で体外で作製した尿道類似の組織を、尿道損傷の9人の少年に移植して最長6年間経過を観察した報告がLancetに公開されています(英語の要約ですが、ウエッブページは下記にあります)。
http://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140673610623549/fulltext
 ただ、我が国ではこのような治療は未だ行われていません。尿道直腸瘻は前立腺の手術などの後にまれに起こる合併症で、必ずしも簡単な手術ではないにしても手術的な治療法があります。ただし、放射線治療後の組織では傷の治りが非常に悪くなっていますので、手術で縫い合わせてもそれがうまく癒合して治ることが期待しにくいという事情があります。
 話はやや遠くなりますが、放射線による難治性の皮膚潰瘍などの治療に骨髄由来等の幹細胞を応用することは試みられています(
http://www.saitama-med.ac.jp/hospital/division_info/woundhealing.html )。このような治療経験が蓄積されて、放射線の当たった組織でも傷が治るようになれば、直腸や尿道を再建する手術が可能になることが期待されます。なお、実際の治療に関しては、担当の医師と十分に相談され、納得のゆく治療法を選択されるようお勧め致します。
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