NPO法人再生医療推進センター

再生医療相談室 回答ページ No.480


専門分野: 骨・軟骨

Q: 足の再生、移植術? 骨の延長。

 はじめまして。
今年6月に生まれた待望の第一子に起こった、足指の先天異常について質問させてください。

右足趾が低形成で、指の様な肉の塊はついてはいるのですが、指の骨・爪が無く、自分でその指を動かしている様子もありません。
レントゲンで見た所、中足骨は親指、小指のみ。他の中三本の中足骨は小さく固まって、機能しないように見えます。
幸い、カカトより上は問題なく形成されているようで、歩くには問題ないだろうと言って貰っています。

しかし、やはり現時点ではもと通りには戻す方法が無いとのことでした。

女の子なので、親としては足元のおしゃれを楽しみたい気持ちが芽生えるころまでに、義肢などで一時的にごまかして、なんとしてでも元通りに直してやりたいと考えています。

質問1 素人考えですが、足首から先を再生?し、移植などを行って、元通りに戻すことは、近いうちに可能になるのでしょうか??

質問2 しかし、そもそもが低形成で生まれて来ているので、再生したとしても同じ形状になってしまわないでしょうか?

掲載日: 2011.12.11

A:

  手の指が失われた場合、自分の足の指(「趾」という漢字を使う場合もあります)を犠牲にして手に移植するような手術もありますから、機能を重視する整形外科的な考え方からは、手の指に比べると足の指の問題は軽く考えられがちではないかと思います。歩行に問題が無いとなれば、なおさらです。ただし、ご心配のように他の人と見た目が違うというのは心の面でも負担になる可能性があり、「なんとしてでも元通りに直してやりたい」というお考えはごもっともだと思います。整形外科に比べると形成外科の医師は見た目の問題を重視しますから、時期をみて一度形成外科の医師に相談されるのが良いと思います。
 さて、ご質問の1ですが、両腕や顔面など、かなり重大な体の部分が失われた場合、他人(お亡くなりになった臓器提供者)のその部分を移植することが海外では試みられています。ただし、この場合は、永続的な免疫抑制が必要で、移植した部分の神経や筋肉がうまく働くかどうかなど、その後の経過にかなりの不確実性があることを覚悟しなければなりません。従って、他人の組織を移植する方法は、可能であるとしても現実的では無いと思われます(少なくとも私はお勧めしません)。
 指や足のように多様な組織(皮膚・筋肉・腱・骨・関節・神経など)が複雑な構造をもって機能する体の部分を自分の細胞で新たに作る方法は、研究はされていますが、まだまだ実現には遠いです。可能になるとしてもかなり先のことと思われます。
 ご質問の2は大変興味深い問題です。まず、人間では指の再生は期待できませんので、実際の結果をみてこの問題の答えを確認することはできないと思います。話は跳びますが、イモリでは手足が失われてもその部分が元の形に再生します。この現象の機序はほとんど解明されていないのが現状ですが、元の形になるための情報は、失われた体の断端の細胞や、そこに集まって再生芽(未分化な細胞の集まりで、この部分の細胞が元の形の手足になってゆくと考えられている)を形成する細胞の中(おそらくはDNAの遺伝情報の中)にあるはずです。そのような意味では、お子さんの左の足が普通であれば、足の指を作る情報はしっかりと持っておられると考えられます。おそらく、低形成の原因は、胎児期に足の指が作られる段階で、何かの原因(遺伝情報のような内在性の原因ではなく、何か突発的な要因)でこれが妨げられたからではないかと思われます。従って、答えとしては、「実際に確認することはできないが、もしも再生するのであれば普通の形になるであろうと想像される。」ということになります。
 良い形成外科の医師と十分相談していただき、現在の状況に最も適したやり方で少しでもご希望が実現することを祈念致します。
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