NPO法人再生医療推進センター

再生医療相談室 回答ページ No.481


専門分野: 脳・神経・脊髄

Q: 脊髄梗塞

 3年前に突然腰に激痛がはしり病院に搬送されましたが、原因が判らず2週間後に脊髄梗塞と言う病名の診断を受けたのですが治療方法もなく下半身の完全対麻痺の障害が残りました。

近年再生医療において脊髄損傷での臨床試験がアメリカで開始され、さらに慶応大学では動物実験で急性期での有効性が確認されたと報道され5年後には臨床試験の開始とありました。
また、組換えHGF蛋白質による脊髄損傷治療薬も期待できるとの情報もあると知りました。

現時点では急性期での研究と言われていますが、慢性期の脊髄梗塞も対象となるのでしょうか。

掲載日: 2011.12.31

A:

  ご相談にもありますように、脊髄損傷に対してES細胞から分化誘導した神経細胞を用いる臨床試験が米国で開始されましたが、この試験は、これを行っていたジェロン社の財政事情から、4人に施行した段階で2011年秋に頓挫してしまい、現在は行われていません。また、残念ながら目立った効果は見いだせなかったようです。ただ、ご相談にもあります慶応大学の岡野教授のグループ等で神経幹細胞や各種の増殖因子を応用した治療法が研究されておりますので、早晩、新たな臨床試験が開始されるものと期待されます。ただ、ご指摘の通り、脊髄損傷に対する再生医療研究は、急性期の動物モデルを用いて行われる場合が多く、慢性期の損傷に対する治療効果は未知数ですから、臨床応用も当初は急性期にしか適応されないものと思われます。但し、このような事情は脳梗塞に対する再生医療でも似たような状況なのですが、急性期治療での経験が蓄積されて安全性が確立してくれば、徐々に慢性期の患者さんへも適応を拡げることができるのではないかと期待されます。
 ご相談のような状態で一点気がかりな点は、脊髄梗塞は脳や心筋の梗塞と同じように、動脈がふさがって起こる病気です。従って、再生医療で脊髄を再生させようとする場合、神経細胞だけでなく血管も同時に再生させて十分な血流を確保する必要があります。手足の血管だけを再生させる方法は骨髄由来の細胞や増殖因子を使う方法が色々検討され、効果も確認済みですが、脊髄の血流を再生させる方法は別途研究する必要があるかも知れません。この点では、脳梗塞や心筋梗塞の再生医療でも同じような問題がありますので、その研究成果が脊髄梗塞にも応用できるかもしれません。
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