NPO法人再生医療推進センター

再生医療相談室 回答ページ No.568


専門分野:脳・神経・脊髄

脳出血の再生医療について

はじめまして。脳出血による重度の後遺症を持つ家族がいます。2年半ほど経過しています。現在間葉系幹細胞の骨髄移植を自費で受けています。
このような慢性期でも効果は望めますか。また知人に海外で治療を受けて元気になり帰ってきた人がいます。
症状は違うものの、可能性があれば海外での治療も視野に入れて考えたいと思っております。イギリス、アメリカ、アルメニア、ドイツ、ロシアなどが候補に挙がっています。
そういうものは騙されるからやめておきなさいとも言われるのですが。海外の治療はどこが進んでいるとか、もしくはアプローチ先などがありましたら、教えていただきたく存じます。 何が正なのかがまったくわかりません。

掲載日: 2015.8.07

A:

脳出血後の後遺症についてのご相談です。
 まず、「間葉系幹細胞の骨髄移植」ですが、これは患者さんの骨髄から培養した間葉系幹細胞を患者さんの血中に戻す一種の自家細胞移植ではないかと想像されます。「骨髄移植」は骨髄の細胞を移植する治療法で、通常はそこに含まれる造血幹細胞を移植して造血機能(血液中の細胞成分を作るはたらき)を再構築するために行われます。一方、元々骨髄や脂肪組織などに微量に含まれる間葉系幹細胞は体外での培養によってどんどん増殖する性質を有し、色々な組織の再生や免疫機能の調節を目的として治療応用が試みられていますが、造血機能は有していません。  間葉系幹細胞を用いたこのような治療は、大学病院などでは、綿密に計画され、厚生労働大臣の審査を受けた研究プロトコールに従って「ヒト幹細胞を用いる臨床研究に関する指針(ヒト幹指針)」に基づく臨床研究として行われていました。一方で一般の医療機関では、医師法に基づいて患者さんと医者の合意の元に無許可・無届けで行うことが可能でしたが、「再生医療等安全確保法(再生医療新法)」の施行後は、第二種(中程度のリスクがある)の再生医療として、特定認定再生医療等委員会の審査を受け、厚生労働大臣へ改革を提出した後でなければ実施することができなくなっています。
 再生医療も医療の一種です。医療とは、病気やケガを治す事ですが、その方法としては、単なる気休めやお祈りの類いでは無く、科学的に正当性が認められた医学や適切に訓練された医術に基づくのが望ましいと考えています。そういう意味では、脳出血後の後遺症に対して間葉系幹細胞を投与する治療法の有効性に関しては、科学的に証明されたと言えるレベルには未だ達していないと考えるべきだと思います。従いまして、「効果が望めますか」という問いへの答えは、「分かりません」です。この再生医療相談室を担当している私共としては、少なくとも有効性や安全性が科学的に評価できるレベルの、ある意味で確立された再生医療を取り扱わせて頂くこととしておりますので、このような答えも悪しからずご了承ください。
 海外での治療についてお考えとのことです。海外での治療を一概に否定する訳ではありませんが、医療制度は国によってかなり異なりますので、事前に十分な調査・検討をされることをお勧め致します。また、外国の一つに「アルメニア」という国名がありましたので、少し調べてみました。アルメニアで科学的な再生医療がどの程度研究されているのかを評価するため、PubMedという医学関連論文の英語のデータベースで検索しました。キーワードとして「stem」、「cell」、「armenia」(日本語では「幹」、「細胞」、「国名」)を使うと、13件の論文がありました。比較のために「armenia」の代わりに「japan」を入れると20,423件、「gernmany」で16,862件、「russia」で771件、「united kingdom」で9,159件、「USA」では72,596件という結果でした。ちなみに、「korea」で6,488件、「china」で23001件、「france」で10,153件、「australia」で5,383件でした。おそらく、英語圏に論文として発表するような再生医療の研究は、アルメニアではそれほど盛んには行われていないものと思われます。
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