専門分野:脳・神経・脊髄
再生細胞薬とはどんなものでしょうか
脳出血発症後1年余りになります。慢性期に入ったせいか、左手のリハビリが思わしくありません。そんな中で耳に入ったのが、「サンバイオ」という再生細胞薬がアメリカでの治験で効果があったという情報です。どんな薬で、日本での治験など臨床研究はどの程度まで進み、実用化のめどはどうかということについてお教えください。特に、脳出血にも適応になる見込みがあるかを知りたいです。よろしくお願いします。
掲載日: 2017.08.13
A:
サンバイオ社の「再生細胞薬」は他家の骨髄から大量培養したいわゆる間葉系幹細胞で、定位脳手術によって脳の損傷部位に直接注入する治療に使われて、米国での臨床試験では、一定の効果が認められました。現在、日本では、脳外傷後の麻痺に対して治験が行われています。
定位脳手術での投与ですから、脳の損傷部位が限局している(広範囲ではない)ことが条件になると思われます。また、効果は今のところ麻痺の改善とされていますので、その他の症状に対する有効性は未知数と思われます。
脳出血に対する適応ですが、脳出血にも種類があり、病変部位が広範囲だったり、明らかな麻痺を伴わないような症例には適応がなさそうです。ただし、一定の部位に限局した脳損傷で麻痺を伴うような場合は、理論的には、梗塞(血流の途絶)や外傷による損傷に対して効果が期待できるのであれば、出血による損傷であっても類似の効果が期待できる可能性があります。一般に、薬が認可された場合、最初は限られた疾患にしか適応がなくても、効果が期待できる別の疾患に対する臨床試験を行って適応を拡大することはしばしば行われていますので、この「薬」の場合も将来的な適応拡大が期待できると思います。
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