項 目 | 内 容 |
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専門分野 | 脳・神経・脊髄 |
質問タイトル | エンテロウイルスD68による急性弛緩性脊髄炎 |
質問内容 |
1年4ヶ月前、当時4歳の息子が、エンテロウイルスD68により急性弛緩性脊髄炎を発症しました。主に上位の脊髄に炎症があり、現在も首、呼吸器、上肢に麻痺があります。脊髄から脳にかけては正常であり、脊髄から末梢にかけての麻痺です。 現在、治療方はないとされていますが、脊髄の前角細胞が再生すれば、神経は元に戻るのではないかと思っています。したがって、ステミラックなどでも回復するのではと勝手に思っています。 実際はどうなんでしょうか。ネットでの情報は少なく、不安な毎日を過ごしています。研究は進んでいるのか、いつか完治する日は来るのかも合わせて教えて頂きたいです。宜しくお願いします。 |
掲載日 | 2020年04月31日 |
回 答 |
急性弛緩性脊髄炎(AFM)後の麻痺に対する再生医療のご相談です。 急性弛緩性脊髄炎(AFM)は、ご相談にある通り、脊髄の前角細胞は脳からの信号に反応して筋肉に動く指令を出す細胞で、ここの細胞が障害されると、筋肉を動かす指令を出せなくなります。以前は小児まひ(ポリオ)のウイルスで多く発症していたのですが、現在、全世界でほぼ根絶された状態になっています。一方、ポリオと同じエンテロウイルスに属するウイルス感染症でも、時に類似の症状を起こす場合があり、今回はこれによる麻痺についてのご相談です。 ステミラックは自己骨髄由来の間葉系幹細胞で、脊髄損傷後の症状を軽減する効果が期待されます。その他の神経疾患に対しても間葉系幹細胞の治療は広く試みられており、当NPOでも、脂肪由来間葉系幹細胞の静脈内投与による難知性神経変性疾患など(筋萎縮性側索硬化症(ALS)を含む)の治療を応援しています(当ホームページの速報などをご参照ください)。 このような現状を見ると、急性弛緩性脊髄炎(AFM)後の麻痺に対しても間葉系幹細胞によりある程度の症状緩和が期待されるところではあります。ただ、問題は、そのような疾患に対する再生医療が研究され、実現に向けた努力がなされているか、という点です。英語の文献なども探してみましたが、そのような研究は実際にはあまりされていないのが現状のようです。このような領域の研究を推進するには、患者さんやそのご家族の声も大変大切な要素であることを記しておきたいと思います。 一方、現状ではもう一つはっきりしませんが、エンテロウイルスによる急性弛緩性脊髄炎(AFM)と筋萎縮性側索硬化症(ALS)の関連を示唆する文献がありますので(Xue YC, et al. Front Mol Neurosci. 2018, 11:63. doi: 10.3389/fnmol.2018.00063. eCollection 2018.)、ALSに対する再生医療の有効性が明らかになるにつれて、AFMにも類似の治療を試みるようになってくるのかもしれません。 急性弛緩性脊髄炎(AFM)後の麻痺に対する再生医療の有効性が広く認められることを祈念いたします。 |
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