NPO法人再生医療推進センター

再生医療相談室

No.714 放射線性骨髄炎の顎骨再生

項 目

内 容

専門分野骨・軟骨
質問タイトル放射線性骨髄炎の顎骨再生
質問内容

子供が5年前に舌癌のため、左舌半分と首のリンパを切除、抗がん剤治療と放射線治療をしました。その一年後、右舌にも転移が見つかり、今現在分子標的薬で治療していますが、放射線性骨髄炎になり顎骨壊死してきています。

抗生物質や鎮痛剤でなんとか過ごしていますが、ips細胞やes細胞での顎骨や歯の再生は可能でしょうか?

掲載日2020年08月06日
回 答

骨髄炎は骨の感染症です。骨髄炎の治療を一般論として説明しますと、急性で原因となる菌が1種類である場合は、原因となる菌に効く抗生物質を投与することで治癒が期待できます。しかし、ご相談の場合は、慢性で原因となる菌も複数種類あると考えられますので、まず、手術によって侵された部分をきれいにした後に、この部位を閉鎖して徹底的に洗浄するような処置が必要になります。現在の状態でこのような処置をすることが可能か、また、可能としてもメリットがあるか、というのが治療法を選択する上で重要な点になります。また、放射線を当てた部位にできた傷は非常に治りが悪いですから、この点も重要な判断基準になります。

iPS細胞やES細胞をはじめ、色々な種類の幹細胞から骨や歯を作る研究は多くなされていますが、実用化に至った例はほとんどないと思われます。骨では、個々の再生したい骨の形をどのように作るかという段階で組織工学的な工夫が必要で、材料や形を作る方法などが検討されています。また、歯は、様々な組織の寄り集まりでできており、例えば一番表面にあるエナメル質は人体で最も硬い組織として知られていますが、これを作る細胞の研究がされている段階で、歯全体を実験室で作ることは現状では難しいと思われます。

担当されている医師とよく相談されて、最も良い医療を受けていただくことを希望いたします。