NPO法人再生医療推進センター

再生医療相談室

No.720 muse細胞

項 目

内 容

専門分野脳・神経・脊髄
質問タイトルmuse細胞
質問内容

失礼なメールお許しください。私は脳幹出血に倒れて14年になります。以降、左半身麻痺と歩行困難に苦しんでおります。こんな14年も経つのだからいい加減に諦めろとお思いでしょうが、今一度自分の足で歩きたいのです。どうか助けてください、お願いいたします。追伸:どうすれば希望が持てるのですか。幹細胞治療はこんな私にも 効果はございますか、お聞かせください、お願いいたします。 muse細胞は私のような慢性期の人間にも有効でしょうか。お聞かせください、お願いです。

掲載日2020年08月27日
回 答

Muse細胞が、脳幹出血後14年経過した方の麻痺に有効か、というご相談かと思います。

Muse細胞は、現在、東北大学病院などで脳梗塞後の麻痺を対象にした臨床試験が行われています。

Muse細胞がご相談のような場合に使われるためには、少なくとも以下の点で有効性を確認する必要があると思われます。

まず、脳梗塞は血管が詰まって血液が流れなくなるために起こる病気ですが、脳出血は血管が破綻して出血する病気で、基本的に原因が異なりますから、脳出血後の麻痺にも有効であるとの検討結果が必要になります。以下の点は他の相談にも何回か書いていると思いますが、脳梗塞にせよ、脳出血にせよ、麻痺を起こしているのは神経細胞やその伝達路の障害であることには変わりありませんから、この問題はいずれクリアーされると思います。実際に、他の間葉系幹細胞を用いた再生医療では、脳出血後の麻痺に対しても投与が行われるようになっています。

次に問題となるのが、病気が起こってからどれくらいの時間のうちであれば効果が期待できるのか、という問題です。この点では、間葉系幹細胞のホーミング(homing)、がいつまで続くのか、という問題と関係してきます。ホーミングというのは、病気が起こって治らなければいけないところに投与した細胞が集まる性質のことで、間葉系幹細胞にはその性質があると言われていますし、Muse細胞も、間葉系幹細胞の中から特別に選ばれた細胞ですから、この性質を持っています。そして、これらの細胞は、治らなければいけない部位が発している何かの信号をキャッチして、その部位に集まって来るのです。したがって、問題は、治らなければいけない部位がいつまでホーミングの信号を出しているか、ということになります。その時期が発症後半年なのか、3年後でも効果が期待できるのか、という問題です。おそらく、この点については、やってみるしかないと思います。発症後の時間をだんだん長くして、効く場合と効かない場合を確認することになります。

そういう意味では、発症後の時間がかなり長くなっても、その人が治そうと思っている間は、治る可能性があるのではないかと思います。例えば、リハビリを行って、発症後にできなくなっていたことを少しでもできるようになりたいと思って努力をしていれば、少しずつでもできるようになるのであれば、それは、治っているということだと思います。Muse細胞はそういう治っている部位にホーミングして、必要な細胞になってくれる性質を持っていると言われています。どうか、将来に希望を持ち続けていただきますよう、お願い申し上げます。