再生医療相談室

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No.763 爪の形成手術

項 目

内 容

専門分野皮膚・毛髪
質問タイトル爪の形成手術
質問内容

扁平苔癬ご原因で両足の親指の爪が生えてこなくなりました。他の指も爪がなくなりつつあります。形成手術で爪を作ることはできないのでしょうか?

掲載日2021年12月13日
回 答

扁平苔癬という病気は、皮膚の自己免疫疾患のようなもので、皮膚に自分の皮膚や粘膜を攻撃する炎症細胞が集まって炎症を起こし、最終的には瘢痕化して傷跡になってしまいます。原因となる病態(原因となる薬剤や金属アレルギー、肝炎ウイルスの感染など)が分かればこれを治療することで治る可能性がありますが、多くの場合、原因が分からないことも多いと思われます。扁平苔癬の患者さんのうち1割程度の患者さんで手足の爪が侵されると言われています。

爪の再生医療であすが、研究があまり進んでいるとは言えない状況です。爪の根本には幹細胞が存在し、マウスの実験では、これが正常に働いている限り、爪が残れば、骨や皮膚を含めて指先全体が再生します。ヒトでも、爪が残れば指先が再生することが期待できます。ただ、このような幹細胞を誘導する方法は知られていませんので、このような幹細胞は今のところ誘導できません。

ということで、ご相談に話を戻しますと、爪を作る再生医療は確立していませんので、現状では、無理です。現状でできるのは爪母組織(爪の幹細胞があるとされる爪の根本の皮下組織)の移植で、手の親指の爪がなくなった時に足の母趾から爪を移植するようなことは可能です(母趾の爪は移植した分だけ小さくなります。爪母全体を移植した場合、足の爪はなくなります)。このような治療は形成外科で行っている場合が多いと思いますので、相談してみてください。ただし、爪も皮膚の一種ですから、移植した組織が扁平苔癬にかからないという保証はないと思います。爪は爪母が瘢痕化したらその時点で生えなくなり、再生は望めませんので、そうなる前に、扁平苔癬という病気そのものを治療することをお勧めします。原因が分かるようであればそれの除去、原因が不明の場合は、全身的な治療により病勢を少しでも緩和してゆくことになります。