項 目 | 内 容 |
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専門分野 | その他 |
質問タイトル | Muse細胞について |
質問内容 |
以下の記事・エッセーなどを参照すると、Muse細胞が条件・期限付きの承認を得られなかった背景にはいろいろな泥臭い動きがあるようで、出澤先生も大変苦労しておられるようです。これらの件について先生方のご意見を伺えるとありがたく、よろしくお願いいたします。 |
掲載日 | 2022年07月26日 |
回 答 |
Muse細胞(Multilineage-differentiateing Stress Enduring―多分化能を有するストレスに強いー細胞(解説者注))について、「これらの件について先生方のご意見を」とのことですが、相談にお答えできるのは現在一人だけなので、個人の感想のようなものとしてお聞きください。 まず、Muse細胞についてですが(この辺りは感想も入るのでご容赦ください)、出澤先生が京都大学で研究しておられる頃(現在は東北大学の教授ですが、その前任は京都大学でした)は、血清の成分によっては多分化能を表す場合とそうで無い場合があるとのことだったのですが、その後良い指標を見つかったとのことで、Muse細胞自体を取り出せるようになったとのことです。この細胞は、間葉系幹細胞と多能性幹細胞(ES細胞やiPS細胞のような多能性を持った幹細胞)の両方の特徴を備えており、間葉系マーカーCD105とヒトES細胞マーカーSSEA-3の二重陽性細胞として組織や間葉系の培養細胞から取り出せるものだそうです。 この細胞が、2021年4月に三菱ケミカル社長になったギルソン社長の元で、「非常に慎重に検討してきた結果、日本での限定的な臨床試験に基づく条件・期限付き承認の申請を取りやめることにした」(同年12月1日の経営方針説明会)となった訳です。それまでに、三菱ケミカルが主導で、東北大学病院で脳梗塞などを中心に治験を進めていたので、この発表は驚きを持って受け入れられたと言う訳です。 この判断の背景にある事態を一つ挙げるならば、再生医療における承認では、我が国では、条件付き早期承認制度というのがあって、一定程度の有効性及び安全性を確認した上で、製販後に有効性・安全性の再確認等のために必要な調査等を実施すること等を承認条件により付与する取扱い等を整理し、明確化することにより、企業における開発予見性を高め、早期の実用化を促進する制度があります。要は、効果が推定できて安全が一定程度確保されれば承認されるという制度で、欧米を中心に、多くの異論があります。このため、社長の会見でも、Muse細胞の米国やEU市場のポテンシャルが大きく制限されることを理由に挙げ、「当面はMuse細胞の作用機序に関する科学的理解を深め、準備が整った段階で完全な第3相試験に向けて取り組んでいく」と述べたようです。 という事で、会社の判断としては従わざるを得ないのですが、出澤先生としては何とかして治療を実現したいと思う事でしょう。実は我が国では、承認になっていない治療法でも、患者と医者が納得すれば行える医師法の世界があって、多くの再生医療はこの世界で行われています(この場合でも再生医療である限り厚生労働省への届出などは必要です)。ただ、CD105とSSEA-3のダブルポジティブと言うMuse細胞の特徴や、他人の細胞でも苦もなく受け入れるところが再生医療の妨げになっているのかも知れません。 ご指摘のような「泥臭い動き」には言及することはできませんでしたが、会社の方針では仕方がないと言うのが私の感想です。こんなところでご容赦をお願いできればと存じます。 |
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