NPO法人再生医療推進センター

第8回 元気の出る再生医療

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再生医療の最前線(4)ALS,及びCOPD;我が国初の臨床試験の開始

筋萎縮性側索硬化症(ALS)、及び、肺気腫等の慢性閉塞性肺疾患(COPD)は難病であり、これまでに効果的な治療法は見つかっていません。今回、他に治療法の無いALS,およびCOPDを対象とした“ヒト自己脂肪組織由来間葉系幹細胞を用いた再生医療”の臨床研究の実施が、新しい再生医療関連法案のもとに特定認定再生医療等委員会の審議を経て我が国で初めて承認されました。海外ではすでに臨床研究が行われており、有効例も報告されつつあります。しかしながら海外では、各施設毎の医の倫理員会による実施承認後の臨床研究であり、我が国におけるような再生医療に関する法的整備(再生医療関連法案;早期承認制度)がなされていません。今回の難病に対する臨床研究の実施承認は画期的であると言えるでしょう。何よりも他に治療法の無い難病で苦しんでおられる患者さんに対する再生医療の新しいトライアルであり、今後の進行状況、及びその成果がおおいに注目されます。

再生医療では体性幹細胞を利用した治療が先行しており、すでに多くの分野で実用化が進んでいます。万能細胞であるES細胞やips細胞に関しましては将来的な実用化、夢の治療をめざして精力的な研究が進められています。しかしながらクリアーすべき課題として、ES細胞には受精卵を用いるという倫理的障壁が、そしてips細胞には遺伝子変異が蓄積してしまうという問題があります。 両者を比較しますと、海外ではES細胞の臨床応用が先行しているというのが実情です。
そういう意味でも、これらの問題に悩まされることのない体性幹細胞、特に、間葉系幹細胞(骨髄細胞や脂肪細胞)を利用した再生医療は、難病に対する臨床応用の早期実用化をもたらす可能性が高く、苦しんでおられる多くの患者さんへの福音になり得るものと大きな期待が寄せられます。

 今回は、最近公表されたALSとCOPDを対象とする新しい再生医療のトライアルの内容について、担当理事によるレポートをトピックスとして掲載させていただきます。

再生医療トピックス2016-10

筋萎縮性側索硬化症(ALS)と慢性閉塞性肺疾患(COPD)を対象としたヒト自己脂肪組織由来間葉系幹細胞を用いた再生医療の臨床研究を開始

京都市の医療法人財団康生会 武田病院(病院長 内藤和世)は、特定認定再生医療等委員会から臨床研究の承認が得られた結果、筋萎縮性側索硬化症(ALS)と慢性閉塞性肺疾患(COPD)を対象としたヒト自己脂肪組織由来間葉系幹細胞を用いた再生医療の臨床研究を開始することを公表した(2016年9月23日)。

本臨床研究の対象疾患は、既存治療法で有効性に乏しく他の治療手段が確立されていない筋萎縮性側索硬化症(ALS) と慢性閉塞性肺疾患(COPD)で治療効果を脂肪組織由来間葉系幹細胞投与前の症状と比較した改善度を評価することを目的としている。また、試験デザインはオープン試験として対照は置かず、筋萎縮性側索硬化症(ALS)では種々の症状(嚥下障害、構音障害、筋力低下など)の変化を同一人での症状改善度を幹細胞投与前と経時的に比較して本研究担当医と神経内科担当医が評価し、慢性閉塞性肺疾患(COPD)では症状及び肺機能の変化など(肺機能(肺活量、一秒量)、呼吸困難(修正MAR)、QOL、憎悪回数、体重、胸部CT、LAA%、栄養評価)を評価する。自己脂肪組織由来間葉系幹細胞は腹部の皮下脂肪組織から採られ、培養・増殖後、経静脈にて合計3回(原則として2ヶ月間隔)投与する。また、有効の評価が得られ、患者から追加治療の希望があった場合は、治療として原則6ヶ月間隔の投与とするとしている。

再生医療を牽引する複数の医療機関で体性幹細胞を用いた再生医療が本格的に始まるようです。今年は再生医療元年と言っても良いかもしれません。

参考文献および参考資料


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