11月上旬に、本再生医療推進センターのホームページでトッピクスとして、ご紹介しました「札幌医科大学と共同開発したニプロ(株)が承認申請した脊髄損傷の治療のための自家培養骨髄間葉系幹細胞」ですが、2016年2月10日付で厚生労働省の再生医薬等製品の先駆け審査指定制度の対象品目の指定を受けました。
その後、厚生労働省は、2018年11月21日に薬食審の再生医療等製品・生物由来技術部会を開催し、脊髄損傷治療に用いる「自家培養骨髄間葉系幹細胞:ステミラック注」を審議し、その結果、安全性は確認できたが、評価症例数が少なく有効性については推定にとどまると判断して「条件及び期限付き承認」扱いとし、7年かけ対照群を設けて比較評価を行うことにし、この治療法を了承しました。以下にその概要をご紹介いたします1)、2)。
厚生労働省の再生医療等製品・生物由来技術部会は11月21日、脊髄損傷の患者さん自身から採取した骨髄間葉系幹細胞を用いて、神経の働きを回復させる治療法を了承しました。順調に進めば、2018年内にも厚生労働大臣に承認され、リハビリ以外に有効な治療法がない脊髄損傷で、間葉系幹細胞を使った初の再生医療製品となり、公的医療保険が適用される見通しです。
この再生医療製品は札幌医科大の本望修教授らがニプロ(株)と共同開発した「ステミラック注」です。患者さんから骨髄液を採取し、骨や血管などになる能力を持つ間葉系幹細胞を採取します。培養することで5千万~2億個の骨髄間葉系幹細胞を、負傷から1~2カ月以内に、静脈から点滴で体内に投与します。この骨髄間葉系幹細胞が脊髄の損傷部に遊走して届き(ホーミング)、炎症を抑えて神経の再生を促したり、神経細胞に分化したりして、修復すると説明されています。ただ、間葉系幹細胞の作用の詳しい仕組みはまだ十分にわかっていません。
安全性や有効性を確認するため、本望教授らは2013年から医師主導の治験を行い、負傷から3~8週間目に細胞を注射し、リハビリをした患者さん13人中12人で脊髄損傷の機能障害を示す尺度(ASIA分類)が1段階以上、改善したようです。運動や感覚が失われた完全麻痺から足が動かせるようになった患者さんもおられたようです。改善割合は尺度B(2例)とC(5例)の患者は100%、Aの患者は6例中5例が改善し83.3%。しかし、治験症例が少ないことから、条件・期限付き承認となりました。条件付き承認で、製品化後、全患者さんを対象に7年ほど、安全性や有効性などを評価する予定です。
なお、iPS細胞(人工多能性幹細胞)から神経のもとになる細胞を作り、脊髄損傷の患者に移植する岡野栄之慶応大教授らの臨床研究について同大の審査委員会は11月13日、実施を大筋で認め、研究チームは正式な了承を経て、近く厚生労働省に承認を申請するとのことです3)。
また、新潟大学医歯学総合研究科の寺井崇二教授とロート製薬(株)は,新しい治療方法の開発が望まれている肝硬変を対象とした再生医療研究開発を進めてきましたが、現在、他家脂肪組織由来幹細胞製剤 ADR-001 の治験を開始しています4)。他家の脂肪幹細胞であることに非常に意義を感じます。
(NPO法人再生医療推進センター 守屋好文)
プライバシーポリシー
再生医療推進センターは再生医学、再生医療の実用化を通して社会への貢献を目指す非営利活動法人です。
Copyright © NPO法人再生医療推進センター All rights reserved.