再生医療トピックスNo.124に掲載した「なぜ,間葉系幹細胞の静脈内投与はアルツハイマー病の治療に効果的なのか!」に関連して、その作用機序の考察論文が医学雑誌「Medical Hypotheses」のLetter to Editors に「The mesenchymal stem cells will break down and remove the abnormal proteins that have become insoluble and deposited1)」として掲載されましたので紹介します。
アルツハイマー病の治療のための間葉系幹細胞(Mesenchymal stem cell :MSC)療法は、アルツハイマー病の患者、その介護者、および社会にとって大きな期待を抱かせています2)。 しかし、提示された仮説の根拠として引用された症例は皮膚アミロイドーシス3)であり、皮膚に沈着したアミロイド注1)はアルツハイマー病の脳に沈着したアミロイドβと同一ではありません(注:“アミロイド”はある特徴をもったタンパク質の総称です)。
これは2つのことを意味します。 1つ目は、MSCが皮膚アミロイドーシス注2の治療に適用できる可能性があること、そしてこれがネプリライシン活性以外の効果である可能性があることです。 さらに、それは、心臓、肝臓、および腎臓のアミロイドーシス、ならびに全身性アミロイドーシスなど様々なアミロイドーシスの治療への道を開く可能性があります。 第二に、そしてより重要なことに、MSCはいくつかのタンパク質分解酵素活性、より具体的には、何らかの理由で不溶性になり組織に沈着した物質を可溶化および除去する能力を持っている可能性があります。
アルツハイマー病に沈着したアミロイドβを分解して除去するネプリライシン活性は、MSCのユニークな特性の一例にすぎないかもしれません。 不溶性の沈着物を可溶性にすることによってそれらを除去する能力は、難治性の神経疾患の治療にとって非常に重要です。 ALS、パーキンソン病、レビー小体型認知症、脊髄小脳変性症などの疾患では、それぞれTDP-43、α-シヌクレイン、およびポリグルタミン酸の沈着が観察されています。この特性は、in vitro実験で確認する事もできます。 これらの不溶性物質が培養中のMCSによって分解されるかどうかを観察することは有用であろうと思われます。 さらに、幹細胞がこれらの異常な蓄積を分解する酵素活性を持っているかどうかを調べることは可能です。 最近、幹細胞がタウのリン酸化を減少させることも報告されました4)。
アルツハイマー病に沈着したアミロイドβを分解して除去するネプリライシン活性は、MSCのユニークな特性の一例にすぎないかもしれません。 不溶性の沈着物を可溶性にすることによってそれらを除去する能力は、難治性の神経疾患の治療にとって非常に重要です。 ALS、パーキンソン病、レビー小体型認知症、脊髄小脳変性症などの疾患では、それぞれTDP-43、α-シヌクレイン、およびポリグルタミン酸の沈着が観察されています。この特性は、in vitro実験で確認する事もできます。 これらの不溶性物質が培養中のMCSによって分解されるかどうかを観察することは有用であろうと思われます。 さらに、幹細胞がこれらの異常な蓄積を分解する酵素活性を持っているかどうかを調べることは可能です。 最近、幹細胞がタウのリン酸化を減少させることも報告されました4)。
したがって、提案された仮説は更に発展するかも知れません。 仮説が証明され、難病に苦しむ患者さん、ご家族、社会のより良い治療が開発されることを心から願っています、と結んでいます。
(adipocyte + neuron / 20210617)
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