再生医療相談室

No.141 再生医療トピックス

パーキンソン病の根本治療・・・再生医療の進歩

パーキンソン病、アルツハイマー病の治療が出来る日、予防が出来る日の到来です

Natureに再生医療論文が2本同時掲載 2025年4月。

2025年3月にはアルツハイマー病に対する再生医療の第3相治験結果が掲載(Nature Medicine)されたばかりでいよいよ再生医療の実用化が始まろうとしています

以下はNatureの紹介記事です。

Nature NEWS 16 April 2025

‘Big leap’ for Parkinson’s treatment: symptoms improve in stem-cells trials

Studies show the therapy is safe, but bigger trials are needed to prove its efficacy.

By Smriti Mallapaty


パーキンソン病は、脳の中でドーパミンという神経伝達物質を作る細胞が減っていくことで、震えや筋肉のこわばり、動作の遅れといった症状が現れる病気です。現在のところ、進行を完全に止める治療法はなく、多くの患者が日常生活に支障をきたしています。

そんな中、世界的に注目されていた2つの臨床試験が、2025年4月にそれぞれ発表され、幹細胞を使った新しい治療法に大きな希望が見えてきました。

1つ目の研究は、アメリカとカナダで行われました。この試験では、ヒトの胚から取り出したES細胞という特別な幹細胞を使い、そこから神経のもとになる細胞を作って、患者の脳内に注射しました。細胞は、運動機能をつかさどる「被殻(ひかく)」という部位に注入され、患者12人に対して行われました。治療の結果、一部の患者ではドーパミンの量が増えたことが脳の画像検査で確認され、症状の改善も見られました。特に、高用量の細胞を移植した患者では、平均してパーキンソン病の症状スコアが23ポイント改善したという報告もあります。重篤な副作用もなく、安全性にも一定の信頼が得られたことから、この研究は今後さらに規模を拡大して進められる予定です。

一方、2つ目の研究は日本の京都大学で行われたもので、こちらではiPS細胞を使用しました。iPS細胞は、大人の皮膚や血液などの細胞を初期化して、様々な細胞に変化させられる技術で、日本が世界をリードしている分野です。この研究では、iPS細胞から作られた神経前駆細胞を7人の患者に移植し、2年間にわたって経過を観察しました。多くの患者でドーパミンが増加し、震えが軽くなったり、日常生活での介助が減るなど、症状の改善が見られました。こちらも大きな副作用は報告されておらず、安全性が確認されたことから、研究チームは日本独自の迅速承認制度を活用して、近い将来の治療実用化を目指しています。

どちらの研究も初期段階の小規模な試験であるため、効果に個人差があり、今後の大規模な検証が不可欠です。しかし、これまで治すことができなかった病気に対して、実際に細胞を移植することで脳内の神経を「補う」治療法が現実になりつつあることは、医学にとっても患者にとっても非常に大きな希望です。

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素晴らしい成果ですが、前者はES細胞、後者はiPS細胞です。

倫理的問題、癌化の問題が解決されたとしても、どちらも①免疫抑制剤を内服しなければならないこと、②神経細胞に分化させてから移植するため脳への手術が必要になります(組織移植になるため点滴で投与することはできません)。

この2点が間葉系幹細胞を点滴で投与する間葉系幹細胞による再生医療との決定的相違です。

パーキンソン病の場合、障害されているのは中脳黒質と分かっており、そこの神経細胞が作用する場所が線条体(≒被殻)ですので、線条体に移植します(上のアメリカ・カナダチームは何と18回手術されています 日本のiPSでは左右に2回手術)。


また、認知症として社会的な問題となっているアルツハイマー病では広範な部位の障害ですので移植は不可能です。そもそも”認知機能を置き換えること”は出来ません。

間葉系幹細胞の点滴で再生医療が安全に行えることは同じNature Medicine3月号に掲載されました(Allogeneic mesenchymal stem cell therapy with laromestrocel in mild Alzheimer’s disease: a randomized controlled phase 2a trial)。

再生医療の3本柱は間葉系幹細胞、ES細胞、iPS細胞です。

間葉系幹細胞の長所は手術が要らないこと、歳や病状に関係なく誰でも受けられること、免疫抑制剤を飲まなくて良いことが挙げられます。一方ES細胞、iPS細胞の再生能力は格段に強く臓器移植さえも可能になるだろうことです。

パーキンソン病、アルツハイマー病(認知症)、ALS、脊髄小脳変性症が治る・治療できる・予防できる!再生医療の夢が花開く時です。

(neuron+adipo / 20250424)