NPO法人再生医療推進センター

No.59 再生医療トッピクス

糖尿病に対する再生医療等の取組(5)

1.届出された再生医療提供計画による取組

厚生労働省の「届出された再生医療等提供計画の一覧1),2)(再生医療等提供計画を国に届出した医療機関(再生医療等提供機関)の一覧)」の内で、第一種再生医療等並びに第二種再生医療等の提供計画から糖尿病に関連する研究及び治療を選び、ご紹介致します。

1.1 第一種再生医療等・研究に関する提供計画1)

届出されている提供計画は20件あり、その内で4件が糖尿病に関するものです(2019年10月31日現在)。以下の文章は、医療機関が厚生労働省に届出た説明文書を引用しています。

1)糖尿病:重症低血糖発作を伴うインスリン依存性糖尿病に対する脳死ドナー又は心停止ドナーからの膵島移植

◎公立大学法人福島県立医科大学附属病院

当該臨床試験は膵島移植と併用する免疫抑制剤などの薬剤の効果と安全性を評価し、膵島移植の医療技術を保険医療とすることをねらいとしています。膵臓移植は膵島を含む膵臓の臓器移植であり、膵島移植は膵臓から膵島を分離して移植する組織移植です。いずれもインスリン依存状態を解決するための移植医療で、移植後は免疫抑制剤の使用が必要です。


膵島移植は、インスリン離脱のためには2回から3回の移植を必要としますが、局所麻酔により肝臓に針を刺してカテーテルという細い管を血管に入れる方法による移植であるために、患者さんの体に対する負担は小さく、また合併症の発生も少ないとされています。主な対象は腎機能が正常なインスリン依存状態糖尿病の患者さんです。膵島移植とは、亡くなった方から提供された膵臓から膵島組織のみを特殊技術で取り出して移植する治療法です。移植された膵島が体で働くようになると、血糖値が安定し、低血糖発作がなくなり、場合によっては正常の血糖を維持するのにインスリン投与が不要となることも期待できることが報告されています。当該臨床試験においては、膵島移植を初回膵島移植時より2年間の間に、複数回(初回を含め3回まで)受けることができるとのことです。


2)糖尿病:重症低血糖発作を合併するインスリン依存性糖尿病に対する脳死および心停止ドナーからのシングルドナー膵島移植の有効性と安全性に関する臨床試験

◎国立研究開発法人国立国際医療研究センター

当該臨床試験は血糖コントロールの難しい糖尿病の患者さんへのよりよい治療を目指し、膵島移植と移植後に必要となる免疫抑制剤の有効性と安全性を評価するために実施されます。当該臨床試験で集められた情報をもとに、厚生労働省で十分な審査を受け、先進医療会議のもとでのさらなる症例の集積、さらに将来的には保険医療を目指すとしています。


膵島移植は特殊な技術で亡くなられた方から提供された膵臓から膵島を分離して移植します。移植された組織がうまく体で働くようになると、血糖値が安定し、低血糖発作がなくなり、場合によっては正常の血糖を維持するのにインスリン投与が不要となることも期待できるとしています。移植後は免疫抑制剤を使用する必要があります。


膵島移植は、局所麻酔により肝臓の血管に針を刺してカテーテルという細い管を血管に入れる方法により移植を行うため、移植による患者さんの体に対する負担は小さく、また合併症の発生も少ないとされています。このため、その主な対象は腎機能が正常な患者さんです。ただし、今までの膵島移植は、インスリン離脱のためには2回から3回の移植を必要としてきました。複数回移植しますと、移植した膵島数が増えますから、効果は大きくなると期待されますが、患者さんの身体的負担が大きくなる、入院回数が増える、合併症の確率が増える、などの問題が生じます。医療費も増加します。また、特に日本ではドナーの数が限られていますので、治療を受けられる患者さんの数が減少します。


こうした点を踏まえ、当該臨床試験では今までの膵島移植とは大きく異なる点として、原則として患者さん1人に対して1回の移植を行うことにあります。これにより、患者さんの心身の負担は減り、医療費も抑制されます。しかし、1回の移植のみで治療効果があるかどうかですが、同研究センターの担当医の方が在籍していたアメリカベイラー大学では、さまざまな改良を加えてインスリン依存状態である1型糖尿病の患者さんに対し膵島移植を実施し、格段に成績を改善することに成功したとのことです。


3)糖尿病:インスリン依存状態糖尿病に対する膵島移植

◎信州大学医学部附属病院

当該臨床研究では、インスリン依存状態糖尿病に対する膵島移植の有効性を検討することを目的としています。膵島移植は、インスリン依存状態糖尿病に対する根治療法となり得る治療法として、世界中で試みられてきました。しかし、膵島を集めることが困難で成功に至りませんでしたが、1990年に、血糖を下げるのに充分な量の膵島が移植されることで、移植を受けた患者さんはインスリン注射が不要になりました。その後、いくつかの医療機関で実施されましたが、一回の膵島移植で、確実にインスリン注射が不要になる例は多くありませんでした。その後、膵島を集める方法が進歩し、必要な量の膵島を移植することが出来るようになりました。移植手技もほぼ確立しており、また、移植後に必要な免疫抑制療法が進歩してきたために成功率が高まっており、欧米では徐々に症例数が増加しています。


膵島移植はお亡くなりになられた方々より、ご提供いただいた膵臓から、特殊技術により、膵島のみを取り出して、局所あるいは全身麻酔下に肝臓内の血管である門脈に注入する細胞移植です。膵島を外分泌細胞から分けて純粋に取り出す技術がまだ十分でないためもあり、一つの膵臓から集めた膵島を移植しても完全にインスリン注射をしないで済むような状態にはならないことが少なくありません。インスリン注射からの離脱には2回以上の移植が必要になることが多いのが現状です。しかし、移植が成功すると、膵島細胞は肝臓内で生着し、血糖値に反応してインスリンを分泌します。移植後に終生免疫抑制剤を服用する必要があります。移植膵島が生着しますと、血糖値に反応してインスリンを分泌しますので、インスリンの注射が不要となることが期待できます。


4)糖尿病:重症低血糖発作を伴うインスリン依存性糖尿病に対する脳死ドナーまたは心停止ドナーからの膵島移植

◎長崎大学病院

当該臨床研究は、重症低血糖発作を伴うインスリン依存性糖尿病患者さんに対して脳死ドナーまたは心停止ドナーからの膵島移植を施行し、重症低血糖発作の消失あるいはインスリン使用量の減量を目的としています。


膵臓移植は、1回の移植によってインスリン注射を必要としない状態(離脱)となる可能性が高いです。しかし、開腹手術を要するため患者さんの体の負担が大きく、また、移植手術そのものによる合併症の可能性もあります。従って、主な対象を腎不全併発インスリン依存状態糖尿病の患者さんとしています。他方、膵島移植は、インスリン離脱のためには2回から3回の移植が必要となります。しかし、局所麻酔により肝臓に針を刺してカテーテルという細い管を血管に入れる方法により移植を行うため、移植手術による患者さんの体に対する負担は小さく、また合併症の発生も少ないです。従って、腎機能が正常なインスリン依存状態糖尿病の患者さんが主な対象となります。


膵島移植は、提供された膵臓から膵島組織のみを特殊技術で取り出して移植する治療法です。移植された膵島が体で働くようになる(生着する)と、血糖値が安定し、低血糖発作がなくなり、場合によっては正常の血糖を維持するのにインスリン投与が不要となることも期待できることが報告されています。さらに、本臨床試験で使用する免疫抑制剤の一部を使用することにより、さらに治療効果が期待できる可能性が報告されています。当該臨床研究においては、膵島移植を初回膵島移植時より2年間の間に、複数回(初回を含め3回まで)受けることができるとそうです。


1.2 第二種再生医療等・治療に関する提供計画2)

届出されている提供計画は190件あり、その内で3件が糖尿病に関するものです(2019年10月31日現在)。以下の文章は、医療機関が厚生労働省に届出た説明文書を引用しています。なお、研究に関する届出件数は65件ですが、糖尿病に関する届出はありませんでした。

当該治療は、患者さん自身の脂肪から採取した脂肪由来幹細胞を静脈点滴により投与することにより、膵島β細胞の修復または機能の回復、糖尿病に伴う炎症の抑制により糖尿病の症状を改善することを目的としています。脂肪由来幹細胞を投与することにより、糖尿病により損傷や機能不全が見られる膵島β細胞を修復、機能回復する効果や、脂肪由来幹細胞から分泌される炎症を抑制する物質の働きにより糖尿病に伴う炎症を抑制する効果が得られ、糖尿病の症状が改善されることが期待されるとしています。



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図1 再生医療等に対する糖尿病に対する取組(取組紹介(1)-(5))


(参考資料)

  1. 厚生労働省ホームページ:届出された再生医療等提供計画の一覧、第二種再生医療等・研究に関する提供計画
  2. 厚生労働省ホームページ:届出された再生医療等提供計画の一覧、第二種再生医療等・治療に関する提供計画

(NPO法人再生医療推進センター 守屋好文)