NPO法人再生医療推進センター

再生医療相談室 回答ページ No.467


専門分野: その他

Q: 直腸の再生医療

 残念ながら日本では直腸・尿道とも再生医療を研究されている機関がないことです。
神経・血管・など難しいものの研究は進んでいるようですが、もっと簡単な(?)器官である直腸などはどうして研究されないのでしょうか?

掲載日: 2011.4.22

A:

  研究分野について疑問をお持ちだと思います。再生医療に限りませんが、医学の研究を始めるにあたって何を研究するかを決める時に、研究結果が世の中の役に立つことを目指すのであれば、一つの目安として、その病気の大変さ(有効な治療法が無く、命に関わるとか、日常生活を大きく障害するとか)とその病気の患者さんの数をかけ算したものを考える場合があります。これが大きいほど、研究成果が社会に与えるインパクトが大きいと考えるからです。また、社会的な注目度が高い病気ほど、研究費を獲得できる可能性が高くなります。神経や血管の研究はこのような意味で取り組みやすく、世界中で多くの研究が行われている理由の一つだと思います。ちなみに、研究資金を集められないような研究は実行不可能ですが、逆に、公的機関や患者さんの団体等から巨額の資金が得られる研究は、参入する研究者も多く研究が早く進みます。特に。米国には、多額の研究資金を提供してくれる患者さんの団体がいくつも存在します。残念ながら、日本にはそのような団体は数えるほどしかなく、提供される金額も桁違いに少ないのが現状です。
 「日本では直腸・尿道とも再生医療を研究されている機関がない」かどうかについては、確信がもてません。少なくとも患者さんに応用されている目立った再生医療は日本では行われていないと思いますが、研究段階のものが無い訳ではなく、現に「尿道組織再生用基材」というようなものが我が国で開発されています。
 さらに、再生医療研究の難易度についてお尋ねです。実は、神経や血管を作る細胞は種類が少なく、例えば血管を再生させる場合に研究対象となる細胞は血管内皮細胞という細胞一種類だけです。そういう意味では、神経や血管は比較的簡単な研究対象なのです。一方、直腸はというと(直腸に限らず、胃から肛門まで消化管全般に言えることですが)、内側には粘膜の層があり、その外側を筋肉の層が取り囲んでいて、そこには血管が走っていて酸素や栄養素を補給し、神経が繋がっていて状況に応じて収縮・弛緩する働きを持っていなければいけません。細胞の種類も多く、構造も複雑ですから、これを人工的に作るのは容易なことではありません。
 以上、再生医療の研究対象や難易度の事情について説明させていただきました。再生医療への応援、宜しくお願いします!
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