専門分野:その他
Q: ES細胞をつかう再生医療について
胚性幹細胞(ES細胞)をつかった再生医療についてのエッセイを書くのですが、いろいろ調べていて疑問が出てきました。
まず胚性幹細胞をつかうものと成体幹細胞をつかうものがあり、それぞれメリットとデメリット があることがわかりました。 でも胚性幹細胞をつかう再生医療がどうしてもよくわかりません。
わかったことは、
1,受精卵の一部をつかう
2,胚盤胞(受精卵)を破壊して取り出す
3,ES細胞を子宮に戻しても子供はできない
わからないことは、
1,ES細胞を未来のために保存するとしたら、母親はお腹のなかでは子供を産めないのか
「受精卵を取り出して実験室などで子供を作るのか」
2,そもそも受精卵を壊さないと取り出せないなら、子供はできるのか
3,ES細胞は冷凍保存で保存するが、成体幹細胞の場合はいつ取り出すのか。
必要になったときにすぐに取り出して使うことができるのか
これらが気になって夜も寝られません。
あと私が書いたことで間違っていることがあったら指摘してください。
掲載日: 2014.4.26
A:
胚性幹細胞(Embryonic Stem cell、ES細胞)に関するご相談です。「わからないこと」にお答え致します。
ES細胞を作成する元になる受精卵は、不妊治療のために体外で受精させ、一部は子宮に戻しますが、余分に作っておいて子宮に戻さないで凍結保存してあるものです。これを胚盤胞になるまで体外で培養して、その中にある内部細胞塊(この部位の細胞から生まれてくる赤ちゃんのからだができる)の細胞を実験室で培養できるようにしたものがES細胞です。ですから、この受精卵を壊してもお母さんの体内には卵巣が残っていますので、そこにある卵子を元に子供ができる可能性は残っています。一方、ES細胞の作成に使われた受精卵は、子宮に戻せば子供として生まれてくる可能性があったのですが、ES細胞を作る過程で壊れてしまいます。この点が、ES細胞の倫理的な問題として取り上げられます。
ES細胞をヒトに移植する場合、必ず他家移植になります。これは、ES細胞の元になった受精卵を提供して頂いたお母さんとお父さんにとっても同じことで、両親にとって子供が免疫学的には他人であるのと同じです。
ES細胞も成体幹細胞もいずれも凍結保存することができます。「成体幹細胞の場合はいつ取り出すのか。」との疑問ですが、骨髄の間葉系幹細胞などは、事前に患者さんから骨髄を取って培養・増殖させておき、十分な量になった時点で手術や点滴などで戻すのが一般的です。また、骨髄移植では、造血幹細胞と呼ばれる成体幹細胞を含む骨髄をそのまま移植するのですが、同じような効果を狙った臍帯血移植では、生まれてきた赤ちゃんのへその緒に含まれる血液を採取して凍結保存し、必要になったときに解凍して使います。ということで、取り出す時期は細胞や使う目的に応じてさまざまです。
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