専門分野:幹細胞などの基礎
Q: 細胞外マトリックス
以前、細胞外マトリックスを使って指が再生したアメリカ人の話をテレビでみました。
ずっと気になっておりまして、私も子供の時に大火傷した手(手首から先)を少しでも治したいです。
細胞外マトリックスの詳細(入手方法、費用、その他留意点など)を教えてください。
よろしくお願いいたします。
掲載日: 2014.1.25
A:
2008年の9月7日に朝日放送「近未来×予測テレビ ジキル ハイド」の「指が生える魔法の粉がある!!」で紹介された細胞外マトリックスのことだと思います。この件については過去に幾つかのご相談があり、それぞれにお応えを致しております(相談番号354,359,385,416,485)。
このお話しの元は、BBCニュースのインターネットページで紹介されたものと思われますが(英語のページですがご参照ください http://news.bbc.co.uk/2/hi/health/7354458.stm )、画像を良く見ると、傷は第一関節よりかなり末梢の指先だけで、爪の根元や骨はほぼ残っているように見えます。断端に残った爪や皮膚、皮下組織は条件を整えれば(血流が良い、細菌感染が無い、乾燥してかさぶたを作らないなど)良く再生しますので、その結果としてほぼ元通りに治ったものと考えられます。即ち、彼の場合、指先が生えてきたのではなく、指先の傷が自然に治ったと考えるべきだと思います(これも英語ですが、この考えを紹介しています http://news.bbc.co.uk/2/hi/7379745.stm )。誤解を与えた元は、これを紹介したフィルム(直前のURLの画面の下の方にあります)の中に、第二関節あたりまで短くなった指が伸びてきたような人工的な動画が挿入されていることにあると思われます。
ということで、少なくともヒトでは、失われた指や手がもう一度元のように生えてくるという現象は起きません。このような現象は、イモリでは起きるのですが、興味深いことに同じ両生類でもカエルでは起きません。これは重要な研究対象になり得るのですが、そのメカニズムは今のところ謎のままです。
ただ、状態が分かりませんので適応があるかどうかはっきりしませんが、瘢痕化して動きにくくなった指を少しでも動くようにする治療は現在でも可能です。もしも機会がありましたら、手の外科を専門とするような整形外科医に一度相談してみて頂くのも一つの方法かもしれません。
|